イト
アメリカの人が、いましゃべってる。これ、宇宙の衛星から飛んできてるんでしょ?
マコト
空は通ってないんだ。通ってきたのは、ここの底だよ
ラボの古いテレビには、アメリカのゲーム大会の生配信。マコトは棚の地球儀を下ろして、太平洋を指でなぞりました。
日本と海外を行き来する通信は、約99%が海の底を通ります。通り道は、海底に敷いた光ファイバーの線、海底ケーブルです(総務省の資料)。世界の海に約500本。つなげると約180万kmで、地球を45周できます(国際団体ICPC、2026年5月)。
空には衛星が飛んでいるのに、なぜわざわざ海の底なのでしょうか。
なぜ衛星ではなく、海の底を通る?
運べる量が、桁ちがいだからです。海底ケーブルは、1本で衛星1機の約160倍のデータを運べます。総務省は、衛星と比べた強みを4つ挙げています。
| 比べる点 | 海底ケーブルは |
|---|---|
| 運べる量 | 1本で、衛星1機の約160倍 |
| 伝わる速さ | 日米間で約5倍 |
| あとからの増量 | 回線の容量を増やせる |
| 点検と修理 | しやすい |
※ 総務省の資料(2025年11月)。
衛星を使う通信は、いったん宇宙まで上がり、また下りてきます。高い軌道の衛星ほど、その道のりが長くなります。

ユイ
でも、衛星のインターネットは増えていますよね。そのうち海底ケーブルは要らなくなるんでしょうか
ピコ
ならないよ。空の道が届けるのは、線を引けない場所。運ぶ量は、海の道とは桁がちがうんだ
空の道の出番は、山や離島、海の上です(衛星インターネットの仕組み)。
では、1本でどれくらい運べるのか。動画に直してみます。
TERM PRIMER
インターネットと海底ケーブル|この記事に出てくる言葉
どれくらいの通信が、海の底を通っている?
割合で言えば、ほぼ全部です。世界のインターネットの通信も、約99%が海底ケーブルを通ります(国際電気通信連合、ITU)。
量で言えば、日本とアメリカを結ぶ「FASTER」(2016年運用開始、約9,000km)が、1本で毎秒60テラビットを運べる設計です。高精細の動画を、約400万人が同時に見られる量にあたります(KDDIの発表)。日本に上がる国際海底ケーブルは、全部で25本です(2025年。運用開始の予定を含む。総務省の資料)。
意外なのは、その線の細さです。深い海を走る部分は、直径17mm。1円玉(直径20mm)より細い線の、真ん中の約2mmを光が通ります(KDDI総合研究所の資料)。それで足りるわけは、海底ケーブルの仕組みで中身から確かめられます。
1円玉より細い線が、地球45周ぶん。これを敷いたのは、国ではなく会社です。
海底ケーブルは誰のもの?国ではなく、会社が敷いた線
海底ケーブルを敷いて持っているのは、多くが会社です。FASTERは、日本のKDDI、米国のGoogleなど5か国の6社が、約1年10か月と306億円をかけて建設しました(KDDIの発表。費用はKDDI総合研究所の資料)。
持ち主の顔ぶれは、変わってきました。以前は、通信会社の共同出資が中心。近年はGoogleやMetaなど米国の巨大IT企業が加わる計画が増え、今後は計画の70%以上に関わる見込みです。日本に上がる線でも、巨大IT企業が持ち主に入るものは、2015年の16本中2本から、2025年は25本中8本に増えました(総務省の資料。2025年は予定を含む)。
船の上から線を海へ下ろしていく工事の進め方は、海底ケーブルはどうやって敷いた?で7枚の図になっています。
会社が敷いたその線にあなたのスマホの通信が乗るまでには、手前に3つの区間があります。
手元のスマホから海外まで、どこを通る?
海外のサーバーまで、データは次の順に進みます。
- スマホやパソコンから、家のルーターへ
- 通信会社の、国内のネットワークへ
- 海岸にある陸揚げ局へ
- 海底ケーブルで海を渡る
- むこう岸の陸揚げ局から、海外のネットワークへ
- データセンターのサーバーに届く。返事も、海を渡って戻る

3の陸揚げ局は、海底ケーブルが陸の通信網につながる建物です。日本では、主に千葉県の房総半島と三重県の志摩半島に集まっています(総務省の報告書)。東京でも大阪でもない理由は、海底ケーブルは日本のどこに上がる?にあります。
イト
じゃあ、ぼくが海外の動画を見るたびに、データは太平洋を渡ってるんだ
ピコ
いまの生配信は、渡ってきたよ。でも、きのう見たアニメは渡ってないかも
よく見られる動画や画像は、利用者に近い配信拠点に控えが置いてあります(CDNという仕組み)。海を渡るかどうかを決めるのは、会社の国籍ではなく、データの置き場所です(国際通信の仕組み)。
| 使い方 | 海を渡る? |
|---|---|
| 海外にいる家族とのビデオ通話 | 渡る。声と映像が、そのつど行き来する |
| 海外の会社が配信する、人気の映画やアニメ | 近くの控えから届くことが多い |
| 国内のサーバーだけで動くサイト | 渡らない |
海を渡る通信には、渡らない通信にない特徴が一つあります。遅れです。
海を渡ると、どれくらい遅れる?
日本とアメリカの往復で、目安は0.1秒あまりです。2016年に東京とアメリカのソルトレイクシティを結んだ実験では、往復の遅れが113〜115ミリ秒でした。国内の実験(25.7ミリ秒)の4倍以上です(情報通信研究機構・国立情報学研究所)。

0.1秒は、動画を見るだけなら気づかない長さです。ボタンを押すたびに往復が起きる対戦ゲームや、相手の返事を待つ通話では、表に出ます(レイテンシとは)。
回線の契約を速いものに変えても、この遅れは縮みません。道のりが同じだからです。
その道が、途中で切れることがあります。
海底ケーブルが切れたら、ネットは止まる?
日本では、1本切れただけで止まることは、まずありません。海へ出る道が25本(予定を含む)あるからです。海底ケーブルの故障は、世界で年に150〜200件。それでも損傷のほとんどは、通信の中断になりません。通信がすぐ別の道へ回るからです(ICPC)。
困るのは、同じ海で何本もまとめて切れたときです。日本の通信が巻き込まれた実例と、切断のニュースで見る点は、海底ケーブルが切れたらどうなる?にまとめてあります。
切れた線は、専用の船が直します。日本を含む海域は、日本・中国・韓国の船3隻が受け持ち、2隻がいつも待機しています(総務省の資料)。海の底の線をどう探し、どうつなぎ直すかは、海底ケーブルの修理はどうやる?で追えます。
ミニクイズ:海底ケーブルを3問で説明できる?
Q1. インターネット海底ケーブルとは何ですか?
A. 海の底に敷いた、光ファイバーの通信線です。日本と海外を行き来する通信の約99%を運びます。
Q2. なぜ衛星ではなく、海底ケーブルを使うのですか?
A. 運べる量が桁ちがいだからです。海底ケーブルは1本で衛星1機の約160倍を運べ、日米間では伝わる速さも約5倍です。
Q3. 海外のサービスを使うと、いつも海底ケーブルを通りますか?
A. いいえ。よく見られる動画や画像は、近くの配信拠点に置いた控えから届きます。海を渡るのは、海外の相手とのビデオ通話のように、控えを作れない通信です。
空ではなく、青いところの底
生配信が終わっても、イトは地球儀を回していました。指が、日本とアメリカのあいだの青いところをなぞります。「この下を、さっきの声が通ってきたんだ」。
いまなら「インターネットは、どうやって海外とつながっているの?」と聞かれても、答えられます。空ではなく、海の底。1円玉より細い線が、日本と海外の通信の約99%を運んでいる。
その線が1本止まった日、イトは自分の動画と字幕のどちらを先に通すかを選ぶことになります。物語の第34話です。
この記事について
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インターネットと海底ケーブルを一文で説明してみよう
「海外との通信が衛星ではなく海底ケーブルを通る理由と、どれくらいの量が通っているかを、数字を入れて説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。




