国際的な通信網がどのように利用されているのか|3行の答えと5つの例

30秒でわかる答え

国際的な通信網は、海外のサイト・動画・ビデオ通話・ゲーム・決済や金融取引のデータを国を越えて運ぶために利用されています。主役は衛星ではなく海底ケーブルで、日本の国際通信の約99%が通ります。世界の総延長は150万km以上、地球約37周ぶんです。

3行で答えるなら

「国際的な通信網はどのように利用されているのか」。答えを組み立てるときは、何に使うか、そのデータがどこを通るか、いつも同じ道なのか、の順に考えます。

  1. 使い道:国際的な通信網は、海外のサイトを読む、動画や音楽を再生する、ビデオ通話をする、オンラインゲームで対戦する、買い物の支払いをするなど、国を越えてデータをやり取りするために利用されています。
  2. 通り道:そのデータは空の衛星ではなく、おもに海底ケーブルを通ります。日本の国際通信の約99%が海底ケーブル経由です(総務省、2025年)。
  3. 例外:海外の会社のサービスでも、よく見られる動画や画像は、近くの配信拠点に置いた控えから届きます。再生のたびに海を越えているのではありません。

記入欄が一行なら、こうまとめられます。

国際的な通信網は、海底ケーブルを中心に世界を結び、海外のサイトや動画、通話、買い物、金融取引など、国を越えた情報のやり取りに利用されている。

2行目の通り道は、下の図で1区間ずつたどれます。

1区間ずつ進む

海外のサイトに届くまでの道

海外のサイトを開いたときの代表的な道を、手元から順にたどります。

  1. あなたのスマホやパソコン

    暖かなラボのノートパソコンでページを開き、通信を表す小さな光が送り出される様子

    URLを開くと、端末は相手の場所を調べ、通信の小さなまとまりを送り出します。

  2. 家や職場のルーター

    手元の端末からWi-Fiでルーターへ届き、その先へケーブルで続く通信の様子

    Wi-Fiやケーブルを通って、まず家や職場のルーターへ進みます。

  3. 国内のネットワーク

    離れた町の通信拠点どうしをつなぎ、国内を進む通信の模式図

    回線事業者やプロバイダーのネットワークを進みます。相手が国内にあれば、海を渡らずに届くこともあります。

  4. 陸揚げ局

    陸側の通信網と海底ケーブルが、海岸の陸揚げ局でつながる断面の模式図

    海外へ向かう通信は、国際的な接続点や、海底ケーブルが陸に上がる陸揚げ局の方向へ進みます。

  5. 海底ケーブル

    海底の地形に沿って続くケーブルを通り、通信が海を越える断面の模式図

    海底ケーブルなどの長い道を通って、国や地域をまたぎます。

  6. 海外のネットワーク

    海を越えた側の陸揚げ局から、複数の通信拠点を経てデータセンターへ続く模式図

    海を越えたあとも、相手の国や地域の通信事業者やデータセンターなど、いくつものネットワークをつないで進みます。

  7. 海外のサーバー

    データセンターのサーバーが要求を受け、返事をネットワークへ送り返す様子

    データセンターやクラウドのサーバーに届きます。返事も、また道をたどって画面まで戻ってきます。

いつも同じ道を通るとは限りません。よく使われる画像や動画は、近い配信拠点(CDN)から返ってくることもあります。

「インターネットで世界とつながっている」だけでは、何に使い、どこを通るのかが伝わりません。学校の課題でも子どもへの説明でも、3行に身近な例を添えると、画面の先で起きていることを話せます。

TERM PRIMER

国際通信の仕組み|先に知っておく言葉

国際通信
国や地域をまたいでデータをやり取りする通信です。
海底ケーブル
国と国のインターネット通信を海の底でつなぐ大きなケーブルです。
陸揚げ局
海底ケーブルが陸へ上がる場所にあり、国内のネットワークへつなぐ施設です。
サーバー
データを保存したり、ほかの端末に届けたりする役割を持つコンピューターです。
CDN
世界中の近い場所から画像や動画などを届けやすくする配信ネットワークです。
レイテンシ
データが届くまでなどにかかる遅延時間です。片道・往復など、測る区間を分けて考えます。

何に利用されている? 身近な5つの例

1行目の使い道は、今日の自分の行動から選べます。

使い道たとえば(運ばれるデータ)
読む・開く海外のニュースサイトを読む、海外のサーバーに預けたファイルを開く(文章・画像・ファイル)
見る・聞く海外の会社が配信する映画や音楽を再生する(映像と音声)
話す海外にいる家族や取引先とビデオ通話をする(双方向の映像と音声)
遊ぶオンラインゲームで海外のプレイヤーと対戦する(操作とその結果)
買う海外のお店で注文や予約をして、カードで支払う(注文と支払いの情報)

見た目はどれも別のサービスですが、中身は同じ形です。海外にある相手のコンピューターへデータを届け、返事を受け取る。 読むのも話すのも遊ぶのも同じ道を使えるのは、インターネットが共通の土台だからです(Webとインターネットの違い)。

個人の暮らしだけでなく、企業や政府もこの通信網を使っています。国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU)が挙げるのは、金融取引、クラウド、政府の通信です。「社会ではどう利用されているか」まで説明するなら、この3つが例になります。

では、その往復はどこを通るのか。ラボで聞くと、イトは迷わず天井を指さしました。

データはどこを通る? 空ではなく海の底

イト

海外の動画って、宇宙の衛星から飛んでくるんでしょ?

ピコ

国際通信のほとんどは、空を通らないよ。通り道は、足もとよりずっと下

日本の国際通信は、約99%が海底ケーブルを通っています(総務省、2025年11月の資料)。主役は空の衛星ではなく、海の底に敷いた光ファイバーです。

理由は、運べる量と速さの差です。同じ資料によると、海底ケーブルは1本で衛星1機の約160倍のデータを運べ、日米間では伝わる速さも約5倍。衛星の出番は、回線を引けない山や離島、海の上です(衛星インターネットはなぜ空から届くか)。

その海底ケーブルは、稼働中と計画中を合わせて世界に600本以上。使われているものだけで、総延長は150万kmを超えます(通信調査会社TeleGeography、2026年)。地球をおよそ37周する長さの線が、海の底に沈んでいます。数え方で数字は変わり、国際ケーブル保護委員会(ICPC)のまとめでは約500本・約180万kmです。ケーブルの中身は海底ケーブルの仕組みで確かめられます。

ただし、海の底だけでは届きません。手元のスマホと海の間にも、海の向こうにも、道があります。

手元から海外のサーバーまで、どう乗り継ぐ?

冒頭の7区間の図は、陸・海・陸の3つに分けると覚えられます。

  • 日本の陸:スマホやパソコンから家のルーター、国内のネットワークを通って、海岸の陸揚げ局に着く。
  • 海:陸揚げ局から海底ケーブルで海を渡る。日米を結ぶ「FASTER」は千葉県南房総市と三重県志摩市から海に入り、総延長は約9,000km。建てたのは国ではなく、KDDIやGoogleなど5か国の6社です(KDDI、2016年)。
  • 海外の陸:向こう岸の陸揚げ局から海外のネットワークを進み、データセンターのサーバーに届く。返事も、また道をたどって戻ってくる。

海底ケーブルを敷ける距離には限りがあります(最大約1.2〜1.3万km)。この距離と位置の関係から、日本は北米とアジアを結ぶ海底ケーブルの中継地になっています(総務省)。日本側の陸揚げ局がどこにあり、なぜ一か所に集めないのかは、海底ケーブルは日本のどこに上がるかで確かめられます。

イトとピコが、端末から国内ネットワーク、海の道、海外サーバーへ進む通信の段階を見ている
海底ケーブルは、道のり全体のまん中の一区間です。

たとえるなら、国内の駅から港に出て、船で海を渡り、海外の駅から目的地の図書館へ向かう旅です。実際には、この道は一つの会社のものではありません。国ごとに一枚の大きな網があるのではなく、いくつもの通信会社やデータセンターのネットワークがつながり、宛先までの道を選んでいます。相手のサーバーの置き場所はサーバーはどこにある?、世界地図の上で道案内を追う場面は第37話「国をまたぐ通信はどこでつながる?」で見られます。

ユイとイトとピコが、海を越えた後も複数のネットワークを通って目的地へ進む様子を見ている
海を越えた後も、相手側のネットワークをいくつも通って進みます。

これだけ乗り継いでも、かかる時間は1秒に届きません。

日本とアメリカの往復に、何秒かかる?

目安は、0.1秒あまりです。2016年に東京とアメリカのソルトレイクシティを結んだ実験では、往復の遅れが113〜115ミリ秒(約0.11秒)でした(情報通信研究機構・国立情報学研究所)。前の年に国内で行った実験の25.7ミリ秒と比べると、4倍以上です。

0.1秒は、動画を見るだけなら気になりにくい長さです。けれど、ボタンを押すたびに往復が起きる対戦ゲームや、相手の返事を待つビデオ通話では、この遅れが表に出やすくなります(レイテンシとは)。しかも距離が生む遅れは、回線の契約を速いものに変えても縮みません。データが進む道のりは同じだからです。

遠いほど遅れる。それなら、世界中で見られる動画を毎回アメリカから運ぶのは、割に合いません。

海外のサービスは、毎回海を越えて届く?

ユイ

アメリカの会社の動画を見るたびに、データは太平洋を往復しているんですか?

マコト

毎回だと大変だ。人気の本なら、近所の図書館にも一冊置いてほしいところだね

ピコ

その発想で合ってる。よく見られるものは、先に近くまで運んであるんだ

3行目の例外が、これです。よく見られる動画や画像は、利用者に近い配信拠点に控えが置かれます。この仕組みがCDNです。控えが近くにあればそこから届き、なければ元のサーバーまで取りに行きます。 マコトの言う「近所の図書館の一冊」が、この控えです。

ユイとマコトとピコが、遠いサーバーと近い配信拠点から届くデータの違いを比べている
遠いサーバーと近い配信拠点。同じデータでも、届くまでの距離が変わります。

だから、次の3つは別々の情報です。

  • サービスの会社がある国
  • データが実際に置かれている場所
  • データが通った道

逆に、控えを作れないもの——ビデオ通話の声や、あなただけに見せる画面——は、相手やサービスの設備がある場所まで行って帰ります。控えが届くまでの流れはCDNの仕組みで追えます。

では、近くから届くはずの動画まで遅いときは? 原因は、海の底ではなさそうです。

海外のサービスだけ遅いとき、どこを確認する?

海の底を疑う前に、手元から順に確かめます。遅さの原因は、距離のほかにも道の途中にいくつもあるからです。

見る場所確認すること
端末・アプリ別のブラウザや端末でも同じか
Wi-Fi・ルーター家の中の通信だけで遅くなっていないか
国内回線ほかの国内サイトも遅いか。混む時間帯だけか
対象サービス公式の障害情報やメンテナンス情報が出ていないか
海外の経路海外のサービスだけ遅いか、時間帯で変わるか

上から順に消していけば、自分の環境か、サービス側か、途中の道かを分けられます。国内のサイトまで遅いなら、原因は海の手前です(ネットが遅い原因)。

3行を自分の例に書きかえるワーク

冒頭の3行を、自分の言葉にします。よく使うサービスを一つ選んで、空欄を埋めてください。

わたしが使っているのは、______です。
やり取りしているデータは、______です。
そのデータは、______を通って届きます。
ただし、______。

答えの例(海外にいる相手とのビデオ通話を選んだ場合):

  • わたしが使っているのは、海外にいる祖父母とのビデオ通話です。
  • やり取りしているデータは、おたがいの映像と音声です。
  • そのデータは、国内の回線、海底ケーブル、相手の国のネットワークを通って届きます。
  • ただし、相手と一本の線で直結しているのではなく、通話サービスの設備の場所によって道が変わります。

動画を選んだ人は、4行目に冒頭の3行目をそのまま使えます。

よくある質問

Q1. 通信衛星は、国際的な通信網の中で何に使われていますか?

A. 回線を引けない山や離島、海の上をつなぐために使われます。国際通信の主役は海底ケーブルで、日本では約99%が海底ケーブルを経由しています(総務省)。

Q2. 海外のサービスは、いつも遠いサーバーから返事が来ますか?

A. いいえ。よく見られる画像や動画は、利用者に近い配信拠点に置いた控えから届きます。

Q3. 海外のサイトが遅いとき、最初に何を分けますか?

A. どの端末、どのサービス、どの時間帯で遅いのかを分けます。そのうえで、家の環境、サービス側、途中の経路の順に確かめます。

一行の問いに、もう一度答える

「国際的な通信網はどのように利用されているのか」。一行で終わりそうだった答えに、いまは5つの使い道、99%が通る海の底、近くから届く例外を足せます。画面のむこう側にあるのは、世界をまたぐ一本の魔法の線ではありません。陸と海と陸を乗り継ぐ、たくさんの道の集まりです。

この記事について

LAB WHITEBOARD

国際通信の仕組みを一文で説明してみよう

「国際的な通信網が何に利用され、データがどの道を通るのかを、使い道・通り道・例外の3行で説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。