3行で答えるなら
「国際的な通信網はどのように利用されているのか」。答えを組み立てるときは、何に使うか、そのデータがどこを通るか、いつも同じ道なのか、の順に考えます。
- 使い道:国際的な通信網は、海外のサイトを読む、動画や音楽を再生する、ビデオ通話をする、オンラインゲームで対戦する、買い物の支払いをするなど、国を越えてデータをやり取りするために利用されています。
- 通り道:そのデータは空の衛星ではなく、おもに海底ケーブルを通ります。日本の国際通信の約99%が海底ケーブル経由です(総務省、2025年)。
- 例外:海外の会社のサービスでも、よく見られる動画や画像は、近くの配信拠点に置いた控えから届きます。再生のたびに海を越えているのではありません。
記入欄が一行なら、こうまとめられます。
国際的な通信網は、海底ケーブルを中心に世界を結び、海外のサイトや動画、通話、買い物、金融取引など、国を越えた情報のやり取りに利用されている。
2行目の通り道は、下の図で1区間ずつたどれます。
1区間ずつ進む
海外のサイトに届くまでの道
海外のサイトを開いたときの代表的な道を、手元から順にたどります。
あなたのスマホやパソコン

URLを開くと、端末は相手の場所を調べ、通信の小さなまとまりを送り出します。
家や職場のルーター

Wi-Fiやケーブルを通って、まず家や職場のルーターへ進みます。
国内のネットワーク

回線事業者やプロバイダーのネットワークを進みます。相手が国内にあれば、海を渡らずに届くこともあります。
陸揚げ局

海外へ向かう通信は、国際的な接続点や、海底ケーブルが陸に上がる陸揚げ局の方向へ進みます。
海底ケーブル

海底ケーブルなどの長い道を通って、国や地域をまたぎます。
海外のネットワーク

海を越えたあとも、相手の国や地域の通信事業者やデータセンターなど、いくつものネットワークをつないで進みます。
海外のサーバー

データセンターやクラウドのサーバーに届きます。返事も、また道をたどって画面まで戻ってきます。
いつも同じ道を通るとは限りません。よく使われる画像や動画は、近い配信拠点(CDN)から返ってくることもあります。
「インターネットで世界とつながっている」だけでは、何に使い、どこを通るのかが伝わりません。学校の課題でも子どもへの説明でも、3行に身近な例を添えると、画面の先で起きていることを話せます。
TERM PRIMER
国際通信の仕組み|先に知っておく言葉
何に利用されている? 身近な5つの例
1行目の使い道は、今日の自分の行動から選べます。
| 使い道 | たとえば(運ばれるデータ) |
|---|---|
| 読む・開く | 海外のニュースサイトを読む、海外のサーバーに預けたファイルを開く(文章・画像・ファイル) |
| 見る・聞く | 海外の会社が配信する映画や音楽を再生する(映像と音声) |
| 話す | 海外にいる家族や取引先とビデオ通話をする(双方向の映像と音声) |
| 遊ぶ | オンラインゲームで海外のプレイヤーと対戦する(操作とその結果) |
| 買う | 海外のお店で注文や予約をして、カードで支払う(注文と支払いの情報) |
見た目はどれも別のサービスですが、中身は同じ形です。海外にある相手のコンピューターへデータを届け、返事を受け取る。 読むのも話すのも遊ぶのも同じ道を使えるのは、インターネットが共通の土台だからです(Webとインターネットの違い)。
個人の暮らしだけでなく、企業や政府もこの通信網を使っています。国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU)が挙げるのは、金融取引、クラウド、政府の通信です。「社会ではどう利用されているか」まで説明するなら、この3つが例になります。
では、その往復はどこを通るのか。ラボで聞くと、イトは迷わず天井を指さしました。
データはどこを通る? 空ではなく海の底
イト
海外の動画って、宇宙の衛星から飛んでくるんでしょ?
ピコ
国際通信のほとんどは、空を通らないよ。通り道は、足もとよりずっと下
日本の国際通信は、約99%が海底ケーブルを通っています(総務省、2025年11月の資料)。主役は空の衛星ではなく、海の底に敷いた光ファイバーです。
理由は、運べる量と速さの差です。同じ資料によると、海底ケーブルは1本で衛星1機の約160倍のデータを運べ、日米間では伝わる速さも約5倍。衛星の出番は、回線を引けない山や離島、海の上です(衛星インターネットはなぜ空から届くか)。
その海底ケーブルは、稼働中と計画中を合わせて世界に600本以上。使われているものだけで、総延長は150万kmを超えます(通信調査会社TeleGeography、2026年)。地球をおよそ37周する長さの線が、海の底に沈んでいます。数え方で数字は変わり、国際ケーブル保護委員会(ICPC)のまとめでは約500本・約180万kmです。ケーブルの中身は海底ケーブルの仕組みで確かめられます。
ただし、海の底だけでは届きません。手元のスマホと海の間にも、海の向こうにも、道があります。
手元から海外のサーバーまで、どう乗り継ぐ?
冒頭の7区間の図は、陸・海・陸の3つに分けると覚えられます。
- 日本の陸:スマホやパソコンから家のルーター、国内のネットワークを通って、海岸の陸揚げ局に着く。
- 海:陸揚げ局から海底ケーブルで海を渡る。日米を結ぶ「FASTER」は千葉県南房総市と三重県志摩市から海に入り、総延長は約9,000km。建てたのは国ではなく、KDDIやGoogleなど5か国の6社です(KDDI、2016年)。
- 海外の陸:向こう岸の陸揚げ局から海外のネットワークを進み、データセンターのサーバーに届く。返事も、また道をたどって戻ってくる。
海底ケーブルを敷ける距離には限りがあります(最大約1.2〜1.3万km)。この距離と位置の関係から、日本は北米とアジアを結ぶ海底ケーブルの中継地になっています(総務省)。日本側の陸揚げ局がどこにあり、なぜ一か所に集めないのかは、海底ケーブルは日本のどこに上がるかで確かめられます。

たとえるなら、国内の駅から港に出て、船で海を渡り、海外の駅から目的地の図書館へ向かう旅です。実際には、この道は一つの会社のものではありません。国ごとに一枚の大きな網があるのではなく、いくつもの通信会社やデータセンターのネットワークがつながり、宛先までの道を選んでいます。相手のサーバーの置き場所はサーバーはどこにある?、世界地図の上で道案内を追う場面は第37話「国をまたぐ通信はどこでつながる?」で見られます。

これだけ乗り継いでも、かかる時間は1秒に届きません。
日本とアメリカの往復に、何秒かかる?
目安は、0.1秒あまりです。2016年に東京とアメリカのソルトレイクシティを結んだ実験では、往復の遅れが113〜115ミリ秒(約0.11秒)でした(情報通信研究機構・国立情報学研究所)。前の年に国内で行った実験の25.7ミリ秒と比べると、4倍以上です。
0.1秒は、動画を見るだけなら気になりにくい長さです。けれど、ボタンを押すたびに往復が起きる対戦ゲームや、相手の返事を待つビデオ通話では、この遅れが表に出やすくなります(レイテンシとは)。しかも距離が生む遅れは、回線の契約を速いものに変えても縮みません。データが進む道のりは同じだからです。
遠いほど遅れる。それなら、世界中で見られる動画を毎回アメリカから運ぶのは、割に合いません。
海外のサービスは、毎回海を越えて届く?
ユイ
アメリカの会社の動画を見るたびに、データは太平洋を往復しているんですか?
マコト
毎回だと大変だ。人気の本なら、近所の図書館にも一冊置いてほしいところだね
ピコ
その発想で合ってる。よく見られるものは、先に近くまで運んであるんだ
3行目の例外が、これです。よく見られる動画や画像は、利用者に近い配信拠点に控えが置かれます。この仕組みがCDNです。控えが近くにあればそこから届き、なければ元のサーバーまで取りに行きます。 マコトの言う「近所の図書館の一冊」が、この控えです。

だから、次の3つは別々の情報です。
- サービスの会社がある国
- データが実際に置かれている場所
- データが通った道
逆に、控えを作れないもの——ビデオ通話の声や、あなただけに見せる画面——は、相手やサービスの設備がある場所まで行って帰ります。控えが届くまでの流れはCDNの仕組みで追えます。
では、近くから届くはずの動画まで遅いときは? 原因は、海の底ではなさそうです。
海外のサービスだけ遅いとき、どこを確認する?
海の底を疑う前に、手元から順に確かめます。遅さの原因は、距離のほかにも道の途中にいくつもあるからです。
| 見る場所 | 確認すること |
|---|---|
| 端末・アプリ | 別のブラウザや端末でも同じか |
| Wi-Fi・ルーター | 家の中の通信だけで遅くなっていないか |
| 国内回線 | ほかの国内サイトも遅いか。混む時間帯だけか |
| 対象サービス | 公式の障害情報やメンテナンス情報が出ていないか |
| 海外の経路 | 海外のサービスだけ遅いか、時間帯で変わるか |
上から順に消していけば、自分の環境か、サービス側か、途中の道かを分けられます。国内のサイトまで遅いなら、原因は海の手前です(ネットが遅い原因)。
3行を自分の例に書きかえるワーク
冒頭の3行を、自分の言葉にします。よく使うサービスを一つ選んで、空欄を埋めてください。
わたしが使っているのは、______です。
やり取りしているデータは、______です。
そのデータは、______を通って届きます。
ただし、______。
答えの例(海外にいる相手とのビデオ通話を選んだ場合):
- わたしが使っているのは、海外にいる祖父母とのビデオ通話です。
- やり取りしているデータは、おたがいの映像と音声です。
- そのデータは、国内の回線、海底ケーブル、相手の国のネットワークを通って届きます。
- ただし、相手と一本の線で直結しているのではなく、通話サービスの設備の場所によって道が変わります。
動画を選んだ人は、4行目に冒頭の3行目をそのまま使えます。
よくある質問
Q1. 通信衛星は、国際的な通信網の中で何に使われていますか?
A. 回線を引けない山や離島、海の上をつなぐために使われます。国際通信の主役は海底ケーブルで、日本では約99%が海底ケーブルを経由しています(総務省)。
Q2. 海外のサービスは、いつも遠いサーバーから返事が来ますか?
A. いいえ。よく見られる画像や動画は、利用者に近い配信拠点に置いた控えから届きます。
Q3. 海外のサイトが遅いとき、最初に何を分けますか?
A. どの端末、どのサービス、どの時間帯で遅いのかを分けます。そのうえで、家の環境、サービス側、途中の経路の順に確かめます。
一行の問いに、もう一度答える
「国際的な通信網はどのように利用されているのか」。一行で終わりそうだった答えに、いまは5つの使い道、99%が通る海の底、近くから届く例外を足せます。画面のむこう側にあるのは、世界をまたぐ一本の魔法の線ではありません。陸と海と陸を乗り継ぐ、たくさんの道の集まりです。
この記事について
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国際通信の仕組みを一文で説明してみよう
「国際的な通信網が何に利用され、データがどの道を通るのかを、使い道・通り道・例外の3行で説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。




