海底ケーブルの仕組み|深海では直径17mm、中継器の電源は陸から1万ボルト

30秒でわかる答え

海底ケーブル(海底通信ケーブル)は、海の底を通って国と国の通信を運ぶ線です。中身は髪の毛ほどの光ファイバーで、深海では直径17mm。約40〜100kmごとの中継器が光を強め直し、その電源は陸揚げ局から1万ボルト以上の直流で届きます。

金曜日のラボ。イトが海外のいとこへ送った音声メッセージは、古いテレビの世界地図の上で青い点になり、海へ沈んでいきました。

イト

海の底の線って、電柱くらい太いんでしょ? 海を渡るんだから

マコト

財布から1円玉を出してごらん。深い海を走る線は、それより細いんだ

その細い線が、世界の海に約500本。つなげると約180万kmで、地球を45周できます(国際団体ICPCの2026年5月のまとめ)。日本と海外の通信は、約99%がこの線を通ります(総務省の報告書)。

1円玉より細い線が、どうやって太平洋を渡りきるのか。鍵は、線の中を通る2本の道にあります。光の道と、電気の道です。

海底ケーブルの太さは?中には何が入っている?

深い海を走る海底ケーブルは、直径17mm。1円玉(直径20mm)より細い線です(KDDI総合研究所の資料)。光が通るのは、その真ん中の約2mm。髪の毛ほどの光ファイバーが、そこに束ねてあります。

内側から外側へ、層はこう重なっています。

層(内側から)役割
光ファイバーデータを光の信号で運ぶ
耐水圧層水圧から光ファイバーを守る
抗張力線(鋼の線)線を引っぱる力を受け止める
銅パイプ海の中の機械へ電気を送る
絶縁層(ポリエチレン)電気が海水へ逃げるのを防ぐ
外装鉄線(浅い海だけ)漁の網や船の錨から守る

※ 総務省の資料にある構造の例。17mmは、鉄線を巻かない深い海用の太さです。

イトとマコトとピコが、光ファイバー、給電導体、保護層を分けた海底ケーブルの断面模型を見ている
層の役割が見えるように大きく作った断面の模型です。実物の太さや層の数とは違います。

光の道は真ん中の2mmだけ。まわりには、光ファイバーを守る層と電気を送る部分があります。電気が必要なのは、海底に並ぶ中継器を動かすためです。この機械が光を強め直さなければ、太平洋を渡りきれません。

TERM PRIMER

海底ケーブルの仕組み|この記事に出てくる言葉

海底ケーブル
国と国のインターネット通信を海の底でつなぐ大きなケーブルです。
陸揚げ局
海底ケーブルが陸へ上がる場所にあり、国内のネットワークへつなぐ施設です。
光ファイバー
光の信号で大量のデータを遠くまで運ぶ細いケーブルです。
国際通信
国や地域をまたいでデータをやり取りする通信です。
レイテンシ
データが届くまでなどにかかる遅延時間です。片道・往復など、測る区間を分けて考えます。

光は何千kmも進める?約40〜100kmごとに中継器

進めません。光は、光ファイバーの中を進むほど弱くなります。そこで海底ケーブルには約40〜100kmごとに「中継器」があり、弱った光を強め直して次へ渡します(総務省の資料)。しかも、光を電気の信号に直しません。光のまま強めます。信号を作り直すのは、海を渡りきった先の陸の装置だけです(ITUの設計ガイド)。

  • 台数:日米間の1本で100台以上。間隔を40〜50kmに詰めた約1万kmの線では、200台以上になります
  • 耐える水圧:水深8,000mぶん。約800気圧で、指先ほどの広さに約800kgが乗る強さです
  • 寿命:システム全体の設計寿命は25年。そのあいだ持たせるために、光を強めるレーザーは予備を重ねて積みます(ITUの設計ガイド)。壊れたら、船で引き上げて直します(海底ケーブルの修理)
  • しないこと:動画やメッセージの保存。通りすぎる光を強めるだけの機械です

※ 岸沿いの都市どうしを結ぶ線などには、中継器を使わない海底ケーブルもあります。

陸の幹線でも、光は約80kmごとに強め直します。ただし陸なら、機械を建物に置いてコンセントにつなげます。海の底には、建物もコンセントもありません。

ユイ

中継器は機械ですよね。海の底で100台以上も、どうやって動かすんでしょう。電池を入れておく……とかですか?

ピコ

電気はね、光と同じ線に乗って、陸からやって来るんだ。さっきの銅パイプが、その道だよ

中継器の電源はどこから来る?陸から1万ボルト

中継器の電源は、陸にあります。ケーブルが陸に上がる所の建物「陸揚げ局」の給電装置が、ケーブルの中の銅パイプを通して、すべての中継器へ直流の電気を送っています。電圧は1万ボルト以上。家庭のコンセント(100ボルト)の100倍以上です(KDDI総合研究所の資料)。

知りたいこと答え
電源の場所ケーブル両端の陸揚げ局(給電装置)
電気の行きの道ケーブルの中の銅パイプ
電圧1万ボルト以上の直流。電流は一定
電気の帰りの道海水
片方の局が止まったら残った局だけで送れるように組む

意外なのは、帰りの道です。電気は、行きと帰りの道がつながって初めて流れます。行きは銅パイプ。帰りは別の線ではなく、海水を使います(ITUの設計ガイド)。海底ケーブルは、海そのものを回路の半分にしているわけです。

たとえば全体で15,000ボルトが要るケーブルでは、片方の局がプラス7,500ボルト、反対の局がマイナス7,500ボルトをかけ、両端から半分ずつ受け持ちます。何千kmもの銅パイプと100台以上の中継器を通るたびに電圧が下がっていくので、出発点にこれだけの高さが要ります。

1万ボルトをかけても、陸から送れる電気には限りがあります。この制約は、中に入れられる光ファイバーの本数にも関わります。

光ファイバー20本ほどで、どれだけ運べる?

海底ケーブル1本に入る光ファイバーは、20本ほどです(2020年の資料。40本以上の新しい設計もあります)。陸の幹線ケーブルには500本以上入ります。細い線と中継器の中は場所が限られ、陸から送れる電気にも限りがあるので、海では本数を増やしにくいのです。

それでも運べる量は桁違いです。日本とアメリカを結ぶFASTER(2016年運用開始、約9,000km)の光ファイバーは12本。行きと帰りで2本1組なので、6組です。設計容量は毎秒60テラビットで、電話に直すと9.4億回線ぶんにあたります。

運用開始ケーブル送り方運べる量
1906年東京〜グアム電信(電気の信号)文字の通信
1964年TPC-1同軸ケーブル(電気の信号)電話128回線
2016年FASTER光ファイバー電話9.4億回線ぶん

いちばん上は海底電信ケーブル。銅の線に、符号にした電気の信号を流して文字を送りました。銅線を木の樹脂で包み、外側を鉄線で巻いた作りです(ICPCと国連環境計画の2009年の報告書)。電話を運んだ1964年の線と比べても、FASTERは約734万倍です(KDDI総合研究所の比較)。12本でここまで運べるのは、1本の光ファイバーに波長(色)の違う光をいくつも重ね、同時に送っているからです。光が細いガラスの中を進む理由は、光ファイバーの仕組みにあります。

その光を送り出し、受け取る場所は、電気の出どころと同じ建物です。

陸揚げ局には何がある?岸から岸まで5つの場所

陸揚げ局は、海底ケーブルが陸の通信網につながる建物です。中には、光の信号を送り受けする伝送装置、中継器へ電気を送る給電装置、海の中の機械を見張る監視設備があります(総務省の資料)。

ユイとピコが、陸上ネットワークから陸揚げ局を経て海底ケーブルへ続く模型を確認している
陸の通信網、陸揚げ局、海へ出る線を1枚にした模型です。建物の形や距離は実物と違います。

イトの声が通った場所を、岸から岸へ並べます。

場所あるものしていること
1. こちらの陸揚げ局伝送装置、給電装置、監視設備光の信号と電気を送り出す
2. 岸に近い浅い海鉄線を巻いた太いケーブル海底の下に埋まり、網や錨をよける
3. 深い海直径17mmの細いケーブル海底に置かれ、光と電気を運ぶ
4. 途中の海底中継器、分岐装置光を強め直す。線を枝分かれさせる
5. むこうの陸揚げ局伝送装置、給電装置光を受け取り、陸の通信網へ渡す

日本の陸揚げ局がある海岸は海底ケーブルは日本のどこに上がる?に、スマホから海外のサーバーまでの道のり全体は国際通信の仕組みにまとめてあります。

表の2行目と3行目では、海の深さと線の太さに注目してください。岸に近い浅い海では太く、深い海では細い線を使っています。

イト

逆じゃないの? 深い海のほうが水に押されるんだから、深いほど太くしないと

マコト

水に押されるのは合ってる。でも線を切る相手は、水じゃないんだ

深い海ほど細いのはなぜ?浅い海だけ鎧を着る

海底ケーブルを切るのは、ほとんどが人の活動だからです。世界の通信用海底ケーブルでは、年に150〜200件の故障が起き、その70〜80%は漁業や船の錨など、人の活動による事故。被害がいちばん多いのは、水深300mより浅い海です(ICPCの同じまとめ)。サメがかじる話は有名ですが、1959〜2006年の故障2,162件のうち、魚がかんだものは0.5%でした(ICPCと国連環境計画の報告書)。

だから鎧は、網と錨が届く浅い海に集めます。

場所線を傷つける相手守り方
岸に近い浅い海漁の網、船の錨鉄線を巻く。海底の下1〜3m(最大15m)に埋める
沖の斜面(水深2,000mまで)漁業、海底の地形鉄線を減らし、埋めるか海底に置く
深い海(水深8,000mまで)水圧(800気圧)、線を引っぱる力鉄線のない細い線を海底に置く

※ 深さの数字は総務省の資料の例です(事業者の案内では、埋める深さは0.6〜2m)。区間ごとの守り方は、敷く前の海底調査で決まります。

網も錨も届かない深い海では、重い鎧は要りません。国内メーカーの見本には、水深50m用から8,000m用まで7種類が並び、深い海用ほど軽い作りです。

物語の第36話では、イトがいちばん重い鎧を深海に集め、岸の近くで錨に負けます。どこを埋め、どこに置くかを決める工事の順番は、海底ケーブルはどうやって敷いた?で追えます。

ミニクイズ:海底ケーブルの仕組みを人に説明できる?

Q1. 海底ケーブルの太さはどれくらいですか?

A. 深い海を走る部分は直径17mmで、1円玉より細い線です。岸に近い浅い海では、鉄線を巻くぶん太くなります。

Q2. 海底ケーブルの中継器の電源はどこから来ますか?

A. 陸からです。ケーブル両端の陸揚げ局にある給電装置が、ケーブルの中の銅パイプに1万ボルト以上の直流を流し、すべての中継器を動かします。帰りの道は海水です。

Q3. 中継器は、どれくらいの間隔で置かれていますか?

A. 約40〜100kmごとです。日米間の1本で100台以上になり、弱くなった光を強め直して次へ渡します。

Q4. 海底ケーブルは全部、海底に埋めてありますか?

A. いいえ。埋めるのは網や錨が届く浅い海で、深さは海底の下1〜3mほどです。深い海では、海底にそのまま置きます。

1円玉より細い線が、海を渡れるわけ

古いテレビの地図に、いとこからの返信が灯りました。「おやすみ。明日また話そう」。イトは1円玉をつまんで、しばらく眺めています。

この幅より細い線の、真ん中の2mmを光が走る。約40〜100kmごとに中継器が光を強め直し、その電気は1万ボルト以上で陸から届く。帰りの道は海。「海底ケーブルって、どうなってるの?」と聞かれたら、光を運ぶ道と、それを支える電気の道に分けて説明できます。

「じゃあ、この線が切れたら?」。イトの次の問いは、そこでした。年に150〜200件も故障が起きているのに、日本のネットが止まらないのはなぜか。海底ケーブルが切れたらどうなる?で、模型の道を切って確かめられます。障害のニュースを読むときに見る点も、そちらにあります。

海底ケーブルがそもそも何を支えているのかは、インターネット海底ケーブルとはで読めます。

この記事について

LAB WHITEBOARD

海底ケーブルの仕組みを一文で説明してみよう

「海底ケーブルの太さと中身、中継器の間隔、中継器の電源が陸から届く道を、数字を入れて説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。