海底ケーブルの修理はどうやる?切れた場所の探し方と、1か所7〜10日の手順

30秒でわかる答え

海底ケーブルの修理は、陸揚げ局から光を送って切れた場所までの距離を測り、専用の船がフックつきのワイヤーで線を引き上げ、船の上で予備の線をつないで沈め直します。通常は1か所7〜10日。水深8,000mからの引き上げだけで、丸1日を超えることがあります。

イト

海の底で切れた線って、どうやって直すの? 人がもぐるの?

マコト

もぐらずに、船の上まで引き上げるらしいよ。でも、広い海のどこで切れたかは、どうやって知るんだろう

ピコ

陸から光を送って測るんだ。船が港を出るころには、だいたいの場所はもうわかってる

イトはラボのホワイトボードに海の断面を描き、底に「8,000m」と書いて手を止めました。富士山を2つ重ねても、海面に届かない深さです。そこに沈んだ太さ2cmほどの線を、だれが、どうやって直すのか。

海底ケーブルの修理はどうやる?手順と数字

海底ケーブルの修理は、海の中では行いません。陸から光で切れた場所までの距離を測り、専用の船が海底の線を引き上げ、船の上で予備の線をつないで沈め直します。通常は1か所7〜10日かかります(KDDIの記事)。

修理を受け持つ会社と、国際団体の資料にある数字です。

何の数字どれくらい
船が動き出すまで要請から通常24時間以内に、機材の積み込みを始める
修理船の速さ時速約28km。1日で約670km
深い海からの引き上げ水深8,000mからだと、丸1日を超えることがある
線をつなぐ作業つなぎ目1か所に10〜24時間
1か所の修理通常7〜10日

※ 1〜3行目はKDDIケーブルシップ(2行目はKDDIオーシャンリンク。1日の距離は掛け算)、4行目は国際ケーブル保護委員会(ICPC)と国連環境計画の2009年の報告書、5行目はKDDIの記事。

意外なのは、船が現場で最初にする作業が「切る」ことです。傷んだ線は、海底でわざと切ってから引き上げます。順番を7枚の図にしました。

  1. 故障を検知する

    陸側の通信設備で異常を知らせるランプが点灯した模式図

    故障が起きたことを検知する

  2. おおよその距離を割り出す

    陸側の測定装置からケーブルの故障箇所までを調べる模式図

    切れているおおよその距離を割り出す

  3. ケーブル船が現場へ向かう

    修理設備を積んだ船が海上の作業場所へ向かう様子

    ケーブル船が現場の海域へ向かう

  4. 海底から引き上げる

    船から下ろしたロープと把持具でケーブルの端を引き上げる断面図

    海底からケーブルを引き上げる

  5. 傷んだ部分を除き、接続する

    船内で傷んだケーブルを切り離し、予備のケーブルを接続する模式図

    傷んだ部分を切り離し、接続し直す

  6. 通信が通るか試験する

    船内の試験装置をケーブルへつなぎ、接続後の状態を確認する様子

    試験をして、通信が通ることを確かめる

  7. 海底へ戻す

    船から戻した接続済みケーブルが、余裕を持った曲線で海底に収まる模式図

    海底に戻して沈める。足した線は、元の道から横へ張り出す形になる

図は模式図です。4の引き上げは、切れ目の両側で1回ずつ、合わせて2回行います。

図の1と2は、海の上の話ではありません。船が現場に着く前に、陸の建物の中で進みます。

TERM PRIMER

海底ケーブルの修理|この記事に出てくる言葉

海底ケーブル
国と国のインターネット通信を海の底でつなぐ大きなケーブルです。
光ファイバー
光の信号で大量のデータを遠くまで運ぶ細いケーブルです。
インターネット
世界中のコンピューターやサーバーをつなぐ大きなネットワークです。
データ
コンピューターが扱う情報。文字、画像、音、動画、Webサイトもデータとして扱われます。

切れた場所は、どうやって見つける?

見つけるのは、線が陸に上がる所の建物、陸揚げ局です。道具は、線の中を通る光そのもの。

陸揚げ局から測定用の光を送ると、光ファイバーのあちこちから、ごく弱い光が散らばって戻ってきます。切れた所から先は、何も戻ってきません。戻りがぷつりと途切れる所までの距離が、切れた場所です(KDDIの技術記事)。距離は、光が行って戻るまでの時間から出します。

光ファイバーは無事で、線の皮だけが傷つく故障もあります。漏れ出すのは、線の中を流れる海底の機械用の電気です。このときは、陸でかけている電圧と電流の値から場所を計算します(KDDIケーブルシップの2021年の講演資料)。

出てくるのは「陸から何kmの所」という距離です。敷いたときの道の記録に当てはめると、海の上の位置になります。ただし、そこは海面のはるか下です。

深い海の底の線を、どうやって船まで引き上げる?

イト

場所がわかったら、切れたところを引っかけて持ち上げるだけでしょ

ピコ

引っかけても、持ち上げるだけの余りがないんだ。だから最初に、船のほうから線を切る

余りがないのは、敷くときに、海底の形に沿わせる分の2〜3%しか持たせていないからです。だから海底で切り、端を片方ずつ引き上げます。

やり方は釣りです。東日本大震災の修理にあたったKDDIケーブルシップの担当者は、深い海では「フックのついたワイヤーを下ろし、まるで釣り針のように」線を引っかけて巻き上げる、と話しています(KDDIの記事)。

  1. 船が、切れた場所の真上に着く
  2. ロープの先に、線を探して切る道具を付けて下ろす。海底を引きずり、線を切る
  3. つかむ道具を下ろして片方の端をつかみ、船に巻き上げる
  4. 船の上で光と電気の試験をし、傷んだ部分を切り取る
  5. 端に水が入らないよう封をし、ロープと浮きを付けて、いったん海に下ろす
  6. もう片方の端も、同じやり方で引き上げる

道具は、海の深さで変わります。

海の深さ使うもの
水深20mまでの岸の近く台船と、ダイバー
水深2,500mまで水中ロボット(KDDIオーシャンリンクに積むもの)。カメラで線を見ながら、切ってつかむ
もっと深い海フックのついたワイヤー。水深約7,000mで直した例がある

※ KDDIケーブルシップの案内。2行目は、船に積んだ水中ロボットが作業できる深さです。

イトの問いに答えると、人が潜るのは、船が入れない水深20mまでの岸の近くです。

2つの端が、船に上がりました。ところが、そのままではつなげません。長さが足りないのです。

船の上で、どうやってつなぎ直す?

海底でまっすぐだった線の両端を、海面まで持ち上げました。水深4,000mなら、片方だけで4km以上の線が、海底から船までの間に使われます。足りないぶんは、船のタンクに積んできた予備の線で埋めます。だから、つなぎ目は2か所になります。

  1. あとから引き上げた端に、予備の線をつなぐ
  2. 予備の線を繰り出しながら、浮きを付けた最初の端まで船を進める
  3. 最初の端を引き上げ直し、予備の線の反対の端とつなぐ
  4. 両岸の陸揚げ局の間で試験をし、通信が戻ったことを確かめる
  5. 船の上の線を海に下ろす

※ 前の節の6つと合わせて、KDDIケーブルシップの修理手順です。

つなぎ目1か所にかかるのは、10〜24時間。髪の毛ほどの光ファイバーを、ずれなくそろえてつなぎ、試験をし、最後に引っぱる力に耐える覆いをかぶせます。電気の信号を送っていた昔の線は、3〜6時間で済みました(ICPCと国連環境計画の報告書)。いまはそれを、揺れる船の上でやります。

直した線は、前より長くなっています。岸に近い埋めてある線では、足した線を元の道から直角に張り出す形で置き、水中ロボットが水の勢いで溝を掘って埋め直します(同じ報告書)。

引き上げが2回、つなぎ目が2か所。深い海では、この4つだけで数日が過ぎます。

修理には何日かかる?通常は1か所7〜10日

通常の修理は、1か所あたり7〜10日です(KDDIの記事)。その間も、通信は残りの線に回っています。通信が戻る日と線が直る日のずれは、海底ケーブルが切れたらどうなる?に実例があります。

日数を大きく延ばすのは、切れ方です。

いつ・どこ切れ方かかった日数
ふだんの修理1か所7〜10日
2024年 能登半島地震(日本海)4か所。海底の地すべり修理工事70日、場所の特定に14日
2011年 東日本大震災(千葉・茨城沖)20か所以上が同時に150日以上

※ 能登はKDDIケーブルシップの2024年の講演資料、震災はKDDIの記事。総務省の白書は、震災でのKDDIのケーブルの障害を10か所、完全復旧まで半年としています。

延びる理由は5つです。

  • 何か所も同時に切れる — ふだん同時に直すのは1〜3か所。震災では20か所でした
  • 線が土砂に埋まる — 能登では線と中継器の一部を回収できず、船の予備が足りなくなりました。線を探して引っかけること10回、つなぎ目は22、使った線は約120km
  • 海が荒れる — 修理の間、船は同じ位置にとどまり続けます。黒潮の強い流れや台風で、計画どおりに進まないことが、たびたび起きています(2021年の講演資料)
  • 許可に時間がかかる — 以前は数日で取れた工事の許可に、数週間かかることがあります(同じ資料)
  • 船が空いていない — 保守船の稼働の状況によっては、必要なときに確保しにくくなります(総務省の報告書)

では、その船はだれのもので、どこで待っているのか。

だれが直す?日本の海を受け持つ3隻

世界の海には6つの保守エリアがあり、その海に線を持つ会社どうしが協定を結んで、修理船を保つ費用を出し合っています。日本を含む「横浜ゾーン」を受け持つのは、日本・中国・韓国の3隻。横浜、上海、釜山の船で、うち2隻がいつも待機しています(総務省の資料)。

横浜の1隻が、KDDIケーブルシップのKDDIオーシャンリンクです。受け持つ海は、グアム島を含む太平洋の西側(西経167度より西)と、日本から台湾まで。日本ではほかに、NTTワールドエンジニアリングマリンが、日本に上がる国際ケーブルなどの保守をしています。

切れていない日は?海底ケーブルのメンテナンス

修理のない日も、保守は続きます(NTTワールドエンジニアリングマリンの案内)。

  • 待機 — いつでも出られる体制で待つ「スタンバイ保守」と、故障のたびに体制を組む「オンコール保守」がある
  • 点検 — 線のすり減りや異常を定期的に調べ、必要なら補修して故障を防ぐ
  • 記録 — 陸に上がる場所、ルート、埋めた深さ、線の種類を記録し続ける

3つ目の記録が、切れた日に「陸から何km」を海の上の位置に変えます。

ミニクイズ:修理の方法を3問で

Q1. 海底ケーブルが切れた場所は、どうやって見つけますか?

A. 陸揚げ局から測定用の光を送り、戻ってくる光が途切れる所までの距離を測ります。

Q2. 深い海の底の線は、どうやって直しますか?

A. 人は潜りません。フックのついたワイヤーで線を引っかけて船に引き上げ、船の上で予備の線をつなぎ、沈め直します。

Q3. 修理には何日かかりますか?

A. 通常は1か所7〜10日です。20か所以上が同時に切れた東日本大震災では、150日以上かかりました。

8,000mの底の線は、船の上で直す

イトはホワイトボードの海面に船を描き足し、底の線まで、フックのついた長い糸を下ろしました。「もぐるんじゃなくて、釣るんだ」。

いまなら「海の底の線、どうやって直すの?」と聞かれても、答えられます。陸から光で場所を測る。海底で切って、船に釣り上げる。予備の線を足して、船の上でつなぐ。通常は1か所7〜10日。

直せる余地まで考えて線を守る話は物語の第36話に、その線が海外との通信で担う役割は海底ケーブルとはにあります。

この記事について

LAB WHITEBOARD

海底ケーブルの修理を一文で説明してみよう

「海底ケーブルの修理を、切れた場所の探し方・引き上げ方・つなぎ方・かかる日数の数字を添えて説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。