海底ケーブルはどうやって敷いた?敷設船の速さ・埋める深さ・最初の1本

30秒でわかる答え

海底ケーブルは、敷設船に数千kmぶんを巻いて積み、速くても時速11〜15kmで進みながら海へ繰り出して敷きました。深い海では海底に置き、水深約1,000mより浅い海では0.6〜2m下に埋めます。日米約9,000kmのFASTERは、約1年10か月と306億円をかけました。

イト

海の底って、何千メートルもあるんでしょ。あんなところに、どうやって線を敷いたの?

ピコ

深い海の底までは、だれも行ってないよ。船の上から垂らしたんだ。ほら、沖のあの船みたいに

ピコがイトを連れてきたのは、陸揚げ局の窓辺でした。水平線の手前に船が1隻。動いているのか止まっているのか、見分けがつきません。線を海底に沿わせるには、このゆっくりした進み方が必要です。

海底ケーブルはどうやって敷いた?数字と7枚の図

海底ケーブルは、敷設船(ふせつせん)という専用の船に巻いて積み、速くても時速11〜15kmで進みながら海へ繰り出して敷きました。深い海では海底にそのまま置き、水深約1,000mより浅い海では0.6〜2m下に埋めます。

公式の資料にある数字です。

何の数字どれくらい
1隻に積める線深海用で5,000kmぶん(KDDIケーブルインフィニティ)
深い海を進む速さ速くても時速11〜15km。自転車ほど
埋めながら進む速さ時速1.0km。歩く人の4分の1
埋める深さ海底の下0.6〜2.0m
線を置ける深さ水深約8,500mまで
線の太さ深い海で17〜21mm。庭のホースほど
日米約9,000kmの工事約1年10か月、306億円(FASTER)

※ 1・3・5行目はKDDIケーブルシップ、4行目はNTTワールドエンジニアリングマリン、2・6行目は国際ケーブル保護委員会(ICPC)と国連環境計画の2009年の報告書、7行目はKDDIの発表とKDDI総合研究所の資料。3・4行目は海底の質で変わります。

意外なのは、手間がかかるのが深い海ではなく、岸に近い浅い海だという点です。同じ1kmを敷くのに、10倍以上の時間をかけます。

作業の順番を7枚の図にしました。3〜6は、KDDIケーブルシップが公開している手順の例です。

  1. 海底の地形を調べる

    船から海底の起伏を調べ、通す場所を検討する模式図

    海底の起伏や地質を調べ、通す道筋を検討します。

  2. ケーブルを船に積む

    港でケーブルを船内の大きな円形タンクへ巻き込む様子

    工場で作ったケーブルを、船内のケーブルタンクへ順に巻いて積み込みます。

  3. 岸側のケーブルを陸へ上げる

    沖の船と海岸の間のケーブルを浮きで支え、陸側へ引き込む模式図

    ここでは、先に一方の岸へケーブルを引き込む工事の例を見ます。浮きで支えてから海底へ沈めます。

  4. 沖へ向かって送り出す

    船の送り出すケーブルが緩やかに沈み、海底の起伏に沿って続く断面図

    船の速さと送り出す量を合わせ、沖へ向かって海底の地形に沿わせます。

  5. 浅い海でケーブルを守る

    海底の埋設機が浅い溝へケーブルを通す様子

    水深約1,000mより浅い海では、鋤(すき)の形の機械で海底の下に埋めます。錨(いかり)や漁の網から守るためで、敷設と同時に進める方法があります。

  6. 反対側の区間とつなぐ

    船内の接続作業台でケーブルの端をつなぐ様子

    反対側で先に敷いた区間などと接続し、通信の道をつなぎます。

  7. つながりを試験する

    陸側の設備につないだ試験装置で通信経路を確かめる様子

    光信号や給電系統などを試験し、設計どおりにつながっているかを確かめます。

図は模式図です。5の埋設は、4の敷設と同時に進める方法があります。

図6のとおり、線は端から端まで一筆書きで敷くわけではありません。反対の岸の浅い海に先に敷いておいた線と、海の上でつなぎ、つないでから沈めます。日本とアメリカを結ぶFASTERは約9,000km。5,000kmぶん積める今の船でも、1隻には収まらない長さです。

岸の場所は海底ケーブルは日本のどこに上がる?、太さ2cmの線の中身は海底ケーブルの仕組みで確かめられます。

太平洋を渡る長い道のりを、自転車ほどの速さで進む。なぜもっと速く敷けないのでしょうか。

TERM PRIMER

海底ケーブルの敷設|この記事に出てくる言葉

海底ケーブル
国と国のインターネット通信を海の底でつなぐ大きなケーブルです。
光ファイバー
光の信号で大量のデータを遠くまで運ぶ細いケーブルです。
インターネット
世界中のコンピューターやサーバーをつなぐ大きなネットワークです。
データ
コンピューターが扱う情報。文字、画像、音、動画、Webサイトもデータとして扱われます。

船の速さは、どうやって決めている?

イトは「もっと飛ばせば、早く終わるのに」と言いました。

船の速さは、線を繰り出す速さと組で決めます。線を、船が進む距離より少しだけ長く出すためです。海底が平らなら、船が100m進む間に出す線は102〜103m(ICPCの報告書)。この余りがあるから、線は谷や岩の形に沿って落ち着きます。足りなければ岩と岩の間で宙に浮き、多すぎれば輪になります。

出だしは、もっと慎重です。線の先が海底に着くまで、船はごくゆっくり進みます。着いてから速さを上げ、海底が下り坂なら線を多めに、上り坂なら少なめに。途中の中継器を船の機械に通すたびに、また速さを落とします。止まって見えた船の上では、この計算が続いていました。

船の速さを決めるには、線が沈んだ先の地形も知っておかなければなりません。そこで必要になるのが、光の届かない海底の地図です。

まっすぐ引けばいいのに、なぜ先に海底を調べる?

設計は、本当に直線から始まります。2つの岸を結ぶ最短の線を引き、そこから海底の起伏や、先に敷かれたほかのケーブルを避けて、道を曲げていきます(NTTワールドエンジニアリングマリン)。

机の上で決めた道は、船で確かめます。船から音を出し、海底からのはね返りで深さを測る方法です。一度に測れる幅は水深の3〜5倍で、深い海では最大20km。埋める予定の浅い海では、幅1kmほどの帯にしぼって細かく測り、海底の下の地層を音で探り、土も採ります(ICPCの報告書)。

見るのは、海底の質、起伏、潮の流れ、漁の様子。少し遠回りでも、線が傷みにくい道を選びます。

道が決まると、どこからどこまでを埋めるかも決まります。

浅い海だけ埋めるのはなぜ?深さは0.6〜2m

イト

浅いところの方が安全そうなのに、わざわざ埋めるんだ

ピコ

浅いところは人が近いからね。深い海より、人のいる海の方が危ないんだ

線を傷つける相手は、深い海の水圧ではなく、船の錨(いかり)と漁の網です。どちらも浅い海に集まります。

海の深さ埋める深さ守る相手
水深100〜150mまで1.5〜2.0m大型船の錨
水深1,000mまで0.6〜1.0m底引き網などの漁
それより深い海埋めずに置く—

※ 上の2行はNTTワールドエンジニアリングマリンの案内。漁が海底の下に及ぶ深さは、0.5〜0.6mと考えられています。

錨への備えが水深100mを超えるのは、嵐のためです。大型船がふだん錨を下ろすのは水深50mほどまで。嵐のときは、ブレーキ代わりに水深110mほどの海でも下ろすことがあります。

埋める機械は、畑を耕す鋤(すき)の形です。KDDIケーブルシップのPLOW-IIは、重さ24トン。船が10〜45トンの力で海底を引いて溝を掘り、同時に線を落とし込みます。鋤が使えない急な斜面は、水中ロボットが水の勢いで掘って埋めます。

浅い海が手ごわいのは、いまに始まった話ではありません。

最初の1本は、いつ誰が敷いた?

船から垂らす方法は、170年以上前から同じです。

年出来事
1850年蒸気の引き船ゴライアス号が、英仏間のドーバー海峡に最初の1本を敷く。数通を送っただけで不通に
1851年鉄線で巻いた丈夫な線に取り替え、約10年使われる
1858年最初の大西洋横断。26日で故障
1866年グレート・イースタン号が敷き直し、大西洋横断に成功
1871年日本で最初の1本。デンマークの大北電信会社が、長崎〜上海と長崎〜ウラジオストクを結ぶ
1964年電話を運べる日本初の太平洋横断ケーブル(TPC-1)

※ 1866年まではICPCと国連環境計画の報告書、日本の2行はKDDIの記事。

最初の1本は、外側を守るもののない線でした。壊した相手は、深さではなく、海峡の波と潮の流れ。翌年の答えが、鉄線の鎧です。浅い海の線を鉄の線で巻いて守るやり方は、いまも変わりません。

では、いまの1本には何年かかるのでしょう。

完成までどれくらい?日米9,000kmで約1年10か月

FASTERは、2014年8月に建設が始まり、2016年6月30日に運用を始めました(KDDIの発表)。約1年10か月です。建設費は306億円でした。

1964年の太平洋横断ケーブル(TPC-1)は、約2年半と、当時の金額で297億円(KDDI総合研究所の比較)。半世紀たっても、年月と金額はほとんど変わっていません。変わったのは運べる量で、電話に直すと約734万倍です。

船が進む時間だけなら、ずっと短く済みます。9,000kmを時速11〜15kmで割ると、休まず進んで25〜34日※。工事には、その前後に、道の調査、役所の許可、漁協との話し合い、線の製造、つないだあとの試験があります。敷設船が沖に見えるのは、長い工事の終わり近くです。

※ 割り算だけの目安。実際は区間を分けて敷き、浅い海では埋めながら進みます。

4コマで描くワーク

紙を4つに区切り、線と丸で描きます。

  1. 調べる — 凸凹の海底と、その上で音を出す船
  2. 岸へ上げる — 沖の船から岸の建物へ、浮きで支えた線
  3. 沖へ敷く — 浅い海は埋め、深い海は海底に置く
  4. つないで試す — 海の上でつなぎ、両岸の設備から通信を確かめる

ミニクイズ:どうやって敷いたかを3問で

Q1. 海底ケーブルは、どうやって敷きましたか?

A. 敷設船に巻いて積み、船を進めながら海へ繰り出して敷きました。深い海では置き、水深約1,000mより浅い海では埋めます。

Q2. 浅い海で、わざわざ埋めるのはなぜですか?

A. 船の錨や漁の網が届くからです。錨に備える海では1.5〜2.0m、漁に備える海では0.6〜1.0m下に埋めます。

Q3. 最初の海底ケーブルは、いつ敷かれましたか?

A. 1850年、英仏間のドーバー海峡です。日本では1871年、長崎から上海とウラジオストクへつながりました。

止まって見えた船は、進んでいた

窓の外の船は、さっきより少しだけ右にいました。イトは「歩くより遅いんだ。じゃあ、いま埋めてるところだ」と言って、しばらく目を離しませんでした。

「どうやって敷いたの?」への答えは、船から繰り出し、深い海では置き、浅い海では埋めた、です。同じ船でも、海底の形や線を守る必要に合わせて進み方を変えています。

そこまでして埋めた線も、切れる日があります。そのとき日本のネットは止まるのか。海底ケーブルが切れたらどうなる?で確かめられます。

海と陸の線が出会う場面は物語の第34話に、線が国際通信で担う役割は海底ケーブルとはにあります。

この記事について

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海底ケーブルの敷設を一文で説明してみよう

「海底ケーブルを敷く方法を、敷設船の速さ・埋める海の深さ・かかる年月の数字を添えて説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。