音声データとは?声が数字になる仕組みと、1分で何MBになるかの早見表

30秒でわかる答え

音声データは、音(空気のふるえ)の大きさを1秒に何千回、何万回と測り、数字の列にした記録です。CDは1秒44,100回・16ビット・左右2本で1分約10.6MB。MP3やAACに圧縮すると約10分の1になり、再生時はスピーカーが数字から空気をもう一度ふるわせます。

片づけの終わったラボで、イトが古いタブレットの空き容量を増やしていると、七秒のボイスメモが鳴りだしました。少し前に、実験が成功した直後の笑い声です。

イト

今はだれも笑ってないのに、同じ笑い声が出てくる。声って、この中にしまってあるの?

ピコ

声は入ってないよ。入っているのは数字。七秒ぶんで、何十万個もね

音声データとは、音(空気のふるえ)の大きさを1秒に何千回、何万回と測り、数字の列にして残した記録です。CDなら1秒に44,100回、左右2本ぶんを測るので、1分で約10.6MB。MP3やAACに圧縮すると、その約10分の1になります。

録音の長さが同じ1分でも、形式しだいでファイルの大きさは数百倍違います。長さだけでは容量を決められない理由を、表で比べてみます。

音声データは1分で何MB?電話からハイレゾまでの早見表

音の種類1秒ぶんの計算1分の大きさ(1時間)
ネット通話むけに圧縮した声(Opus)圧縮して8〜12kbps0.06〜0.09MB(3.6〜5.4MB)
電話の国際規格(G.711)8,000回 × 8ビット × 1本 = 64kbps0.48MB(28.8MB)
MP3・AAC(128kbpsのとき)圧縮して128kbps0.96MB(57.6MB)
CD44,100回 × 16ビット × 2本 = 1,411.2kbps約10.6MB(約635MB)
ハイレゾ(96kHz・24ビット、圧縮なし)96,000回 × 24ビット × 2本 = 4,608kbps約34.6MB(約2.07GB)

※ kbpsは1秒あたりのキロビット数です。8で割ってバイトに直し、1MB=100万バイトで計算しました。曲名や画像など、音のほかの情報は含みません。1行目はOpusの規格書(RFC 6716)が、4kHzまでの声にちょうどよいとする幅、5行目は日本オーディオ協会の「ハイレゾ」ロゴの条件を左右2本で計算した値です。

CDの1分は、128kbpsのMP3なら約11分ぶん。いちばん下の行の1分は、いちばん上の行なら6時間以上ぶんになります。

3行目の128kbpsと同じ数字を、スマホの速度制限でも見かけます。制限中に音楽が流れるかは、128kbpsの早見表で確かめられます。

表の計算に出てくる「回」「ビット」「本」は、別々のものを数えています。録音の流れをたどりながら、それぞれが何を表すのか確かめます。

TERM PRIMER

音声データの仕組み|この記事に出てくる言葉

データ
コンピューターが扱う情報。文字、画像、音、動画、Webサイトもデータとして扱われます。
ビット
コンピューターが扱う情報の最小単位。0か1のどちらかを表します。
バイト
データ量を表す単位。多くの場合、8ビットを1バイトとして扱います。
ファイル形式
データをどのルールで保存しているかを表す種類です。画像ならPNGやJPEGなどがあります。
ストリーミング
動画や音楽を全部保存し終える前に、受け取りながら再生する方法です。

声はどうやって数字になり、また声に戻る?

イトの七秒が、どこで数字になり、どこで声に戻ったのか。先に漫画で追います。

漫画:未来のぼくへ、笑い声を 全4ページ

静かなラボで、七秒の笑い声がタブレットから流れます。今は笑っていないイトが、声を残す仕組みをのぞいてみます。

画像を押すと拡大できます。+/−で大きさを変え、拡大中はドラッグして読めます。

1 / 4静かな今に、昔の声

タブレットで実験成功の七秒を再生するイト。今は笑っていない自分を確かめ、声を端末にしまったのかと考える。

1ページ目:静かな今に、昔の声
録音の声は、今のイトが話している声とは別の時間の記録です。

1ページ目のセリフ

  • タブレットで実験成功の七秒を再生するイト。今は笑っていない自分を確かめ、声を端末にしまったのかと考える。
  • 端末の録音「あはは!」
  • イト「今は、笑ってないぞ。」
  • イト「声を、この中にしまったの?」
  • 画面は実験成功の七秒、0:03/0:07、一時停止アイコン。最後はイトの手に一台、机に端末なし。

2 / 4音の変化を、数値へ

ピコが音の変化を数値で残すと伝える。イトは説明図で、等間隔に測った五点と数値の関係を見て、数字から声が出るかと考える。

2ページ目:音の変化を、数値へ
代表的なPCMでは、信号を一定間隔で測り、有限の数値へ置き換えます。図の0、2、0、-2、0は説明用で、実際の録音を表示した値ではありません。

2ページ目のセリフ

  • ピコが音の変化を数値で残すと伝える。イトは説明図で、等間隔に測った五点と数値の関係を見て、数字から声が出るかと考える。
  • ピコ「録音は、音の変化を数字で残すんだ。」
  • イト「数字から、声が出るの?」
  • 紙の説明図に等間隔の五点。上が正、下が負の電気信号の例で、左から0/2/0/-2/0。最初のコマでは紙を見始め、下のコマで図を寄って見る。

3 / 4新しく、空気を揺らす

端末の説明図で、記録からスピーカーと耳へ進む流れを確かめる。七秒の再生が終わる。イトは今度は未来の自分へ録音しようとボタンを押す。

3ページ目:新しく、空気を揺らす
再生で生まれるのは、記録をもとにした新しい空気の揺れです。録音時の空気そのものが戻るわけではありません。

3ページ目のセリフ

  • 端末の説明図で、記録からスピーカーと耳へ進む流れを確かめる。七秒の再生が終わる。イトは今度は未来の自分へ録音しようとボタンを押す。
  • ピコ「記録をもとに、スピーカーが空気を揺らす。」
  • イト「あの時の空気を、戻したんじゃないんだ。」
  • イト「じゃあ、未来のぼくへ。」
  • 最初の画面に説明図、記録のアイコン→スピーカー→空気の波→耳。次は0:07/0:07と再生ボタン。最後はマイクと丸い赤の録音ボタン、イトは着席して押す。

4 / 4未来まで、待てない

未来へ向けて話すイト。ピコも録ろうとためらうと、イトが笑ってしまう。保存した声をすぐ再生し、二人はまた笑う。

4ページ目:未来まで、待てない
保存した声を後から再生できます。この場では待ちきれず、録ったばかりの声を聞き直しました。

4ページ目のセリフ

  • 未来へ向けて話すイト。ピコも録ろうとためらうと、イトが笑ってしまう。保存した声をすぐ再生し、二人はまた笑う。
  • イト「未来のぼく、笑った?」
  • ピコ「あ……ぼくも録る?」
  • イト「ふふっ!」
  • ピコ「未来まで、待てなかったね。」
  • 端末の録音「ふふっ!」
  • 録音中の赤い丸に白い停止四角。最後は未来のぼくへ、0:07、一時停止アイコンで再生中、録音の赤い印なし。笑い声の吹き出し尾は端末へ。

横にスワイプして次のページへ。画像を押すと拡大できます。

波と数値はPCMの入口を簡略化した説明図です。実際の録音は量子化や符号化も含み、圧縮後のデータは図の数値そのままではありません。再生で録音時と同じ空気が戻るわけではありません。

録音から再生までの流れを本文で読む ↓

100%

拡大中はマウスや指でドラッグできます。100%では左右スワイプ・左右キーでページ送り。

漫画の流れを、機械の仕事に直すと6段階です。

段階起きることこのときの姿
1. 音を受ける空気の押し引きでマイクの振動板が動き、同じ形の電気の波になる途切れなく変わる電気信号
2. 数字にする(A/D変換)一定の間隔で波の高さを測り、決まった段のどれかに当てはめ、2進数で書く数字の列(PCM)
3. 小さくするそのまま使うか、コーデックで圧縮するPCM、または圧縮した音声
4. しまう・送るファイルという入れ物に収めて保存するか、通信で送るWAV、MP3、Oggなどのファイル
5. 読み出す入れ物から取り出し、圧縮してあれば数字の列に戻す数字の列(PCM)
6. 音を出す(D/A変換)数字を電気の波に戻し、アンプで大きくして、スピーカーが空気をふるわせる耳に届く新しい音

スマホでは、この6つが1台の中に収まっています。

2の「測る・当てはめる・2進数で書く」は、文部科学省の高校「情報Ⅰ」の教材では、標本化・量子化・符号化と呼ぶ手順です。できあがった数字の列がPCM(ピーシーエム)。CDの中身も、電話の規格G.711も、このPCMです。

イトとユイとピコが、ラボに浮かぶ音の波を一定間隔の数値カードに変える様子を見ている
録音の入口では、連続して変わる音を測り、コンピューターが扱える数値の記録に変えます。

2の「一定の間隔」に、CDが選んだのは1秒に44,100回。きりの悪いこの数には、人の耳の都合が関わっています。

なぜ1秒に44,100回も測る?

ユイ

44.1kHz、16ビット、128kbps……どれも、数字が大きいほど音がいい、で合っていますか?

ピコ

今、ひとまとめにしたね。数えているものが別々だよ。方眼紙で見に行こう

音の波を、方眼紙に写すと考えます。横のマス目が「1秒に何回測るか」、縦のマス目が「高さを何段で書くか」です。

横のマス目には決まりがあります。写し取れる音の高さは、測る回数の半分まで。人の耳に聞こえる上限は、およそ20kHz(1秒に2万回のふるえ)とされています。その2倍の4万回を少し上回る44,100回なら、聞こえる高さをひととおり写せます。

電話の規格G.711は1秒に8,000回なので、写せるのは4kHzまで。耳の上限の5分の1です。この規格の電話の声が、じかに聞く声より少しこもって聞こえるのは、4kHzより高い成分が写っていないことが一因です。

測る回数が足りないと何が起きるかは、物語の第76話でイトが確かめています。1秒8,000回で測ると、高さのちがう二つの音が、同じ点の並びになってしまいます。

ユイとマコトとピコが、連続する波を等間隔で測り、有限の数値段階に置き換える二つの処理を確認している
横方向の測る間隔がサンプリング、縦方向の数値段階が量子化です。どちらも連続した変化を有限の記録に変えます。

縦のマス目がビット深度です。16ビットなら2の16乗で65,536段、24ビットなら約1,678万段。波の高さを、いちばん近い段の数字で書きます。

三つ目がチャンネル数で、同時に何本の音を持つかです。モノラルは1本、ステレオは左右の2本。iPhoneのボイスメモなら、設定 → アプリ → ボイスメモ →「収録モード」で、モノ・ステレオ・空間オーディオ(対応する機種のみ)から選べます。

項目方眼紙でいうと増やすと変わること
サンプリング周波数(Hz)横のマス目。1秒に測る回数写せる音の高さの上限
ビット深度(ビット)縦のマス目。高さを書く段の数小さな音と大きな音を書き分ける細かさ
チャンネル数方眼紙の枚数左右や前後の広がり

ユイはノートの「音質」という一列を消し、三列に書き直しました。三つを増やせば数字は増えますが、マイクが拾わなかった音は増えません。

測る回数、段の細かさ、音の本数。この三つをかけ合わせると、1秒ぶんのビット数が出ます。ユイが並べたkbpsは、計算した結果を表す単位でした。冒頭の早見表も、この関係を使っています。

自分の録音は何kbps?サイズと長さから逆算する

圧縮していないPCMは、かけ算ひとつで大きさが決まります。

1秒のビット数 = サンプリング周波数 × ビット深度 × チャンネル数

CDなら 44,100 × 16 × 2 = 1,411,200ビット。8で割って176,400バイト、60秒で約10.6MBです。なぜ8で割るかは、ビットとはとバイトとはで確かめられます。

圧縮した音声は、逆向きに計算します。

ビットレート(bps) = ファイルのバイト数 × 8 ÷ 秒数

七秒で112KB(112,000バイト)の録音なら、112,000 × 8 ÷ 7 = 128,000。128kbpsです。手元の録音でも試せます。

  1. 自分で録った短い録音を一つ選び、長さ・ファイルサイズ・拡張子をメモする。iPhoneのボイスメモは、ファイルに書き出すと、ふつうは .m4a になります
  2. 上の式でビットレートを出し、早見表のどの行に近いかを見る
  3. 別の形式に変換するときは元のファイルを残し、サイズと聞こえ方を比べる

※ 圧縮した音声のビットレートは平均の値です。場面ごとに使うビット数を変える方式があり、曲名や画像のぶんも加わるので、計算とぴったりは合いません。名前や住所を話している録音は、画面を人に見せる前に中身を確かめます。

逆算した数字がCDの10分の1しかなくても、音楽はふつうに聞こえます。残りの10分の9がどこへ消えたかは、形式の名前を分けると見えてきます。

MP3・AAC・WAV・FLACは何が違う?

方眼紙で表したのは、圧縮する前のPCMです。ファイルの説明には、圧縮方法や入れ物の名前も出てきます。似た名前に見えても、役割は次の4つに分かれます。

  • PCM:測ったままの数字の列
  • コーデック:数字の列を小さくし、再生のときに戻す方式。MP3、AAC、FLAC、Opus
  • コンテナ:音声と曲名などをまとめて収める入れ物。WAV、Ogg
  • 拡張子:ファイル名の末尾に付く名札。.wav、.mp3、.m4a

小さくするやり方は2種類です。

圧縮戻すとどうなる?例
可逆圧縮(ロスレス)圧縮する前の数字の列が、そのまま戻るFLAC
非可逆圧縮元に近い数字の列が戻る。まったく同じにはならないMP3、AAC、Opus

MP3やAACが省くのは、人の耳に聞こえにくい部分です。MP3の開発を進めたドイツのフラウンホーファーIISは、耳は完全な受け手ではなく、どの曲にも聞き取れない成分があると説明しています。そこを省くと、必要な大きさは元の約10%。CD並みの音にするビットレートは、MP3で192kbps以上、AACなら128kbpsで足りるとしています。

イトとマコトとピコが、細かな波形を持つ大きな音声データと、小さく符号化された音声データを比べている
圧縮はデータを小さくする方法です。可逆か非可逆かによって、デコード後に元のデジタルデータまで戻せるかが違います。

名前ごとに並べると、役のちがいが見えます。

名前役まちがえやすい点
WAVコンテナ(RIFFという形式のファイル)中身は圧縮なしのPCMが多いが、ADPCMなど別の方式も入る
MP3コーデック非可逆。.mp3 という単独のファイルで出回ることが多い
AACコーデック非可逆。MP3より少ないビットで同じ品質をねらう
FLACコーデック可逆。戻るのは圧縮前の数字で、録音する前の音ではない
Oggコンテナコーデックの名前ではない。OpusやFLACを収められる

拡張子と中身の関係は、ファイル形式とはで扱っています。ワイヤレスイヤホンへ送る途中の圧縮や待ち時間は、Bluetoothの仕組みで確認できます。音の遅れと途切れを分けて比べたいときの案内です。

どの形式でも、鳴らす前にはもう一度PCMに戻します。残るのは、数字が音になる最後の一歩です。

再生すると、録音した日の空気が戻ってくる?

戻ってきません。スピーカーが作るのは、記録をもとにした新しい空気のふるえです。

読み出したPCMは電気の波に戻され、アンプで大きくなって、スピーカーの振動板を動かします。振動板が空気を押し引きし、そのふるえが耳に届きます。マイクも部屋もスピーカーも録音のときとちがうので、波の形はぴったり同じにはなりません。それでも、声の高さや間合いが残っていれば、だれの声か、どんな気持ちだったかが伝わります。

イト

あのときの空気をしまってたんじゃないんだ。でも笑い方が残ってたから、思い出せた

マコト

記録は人の代わりにはならないけれど、離れた時間へ声を届け直すことはできるんだね

受け取りながら鳴らす仕組みはストリーミングとは、今の声をほぼ同時に届ける道はライブ配信の仕組みに続きます。

確認クイズ:四枚の札は何を表す?

44.1 kHz、16 bit、stereo、128 kbps。録音アプリや音楽ファイルの情報で見かける四枚の札です。

  • 44.1 kHz:1秒に測る回数。方眼紙の横
  • 16 bit:高さを書く段の数。方眼紙の縦
  • stereo:左右2本ぶん
  • 128 kbps:圧縮したあと、1秒に平均で使うビット数

はじめの三枚をかけると、CDの1,411.2kbps。四枚目は、それを約11分の1に圧縮した数字です。

音声データでよくある質問

Q1. 音声データは全部、0と1でできていますか?

A. 保存や通信のあいだは、0と1の並びです。録音の前と再生のあとは、空気と電気の途切れない波になっています。

Q2. 音声データが大きくて送れないときは、どうすれば小さくなりますか?

A. MP3やAACに変換します。128kbpsなら1分で約1MBです。圧縮なしのままなら、ステレオをモノラルにすると半分になります。変換の前に、元のファイルを残しておきます。

Q3. WAVならMP3より高音質ですか?

A. 拡張子だけでは決まりません。WAVは入れ物で、圧縮なしのPCMが多いものの、別の方式も入ります。MP3をWAVに変換しても、圧縮のときに省いた部分は戻りません。

Q4. 可逆圧縮(ロスレス)なら、元の声を完全に戻せますか?

A. 戻るのは、圧縮する前の数字の列です。マイクが拾わなかった音や、録音のときに混ざった雑音は変わりません。

七秒の笑い声を、もう一度鳴らす

イトは「実験成功の七秒」を、削除の候補から外しました。CDと同じ細かさなら、七秒は片側だけで 44,100 × 7 = 308,700個の数字。その一つひとつが、あの瞬間の空気の押され具合です。

それから録音ボタンを押し、未来の自分へ七秒だけ話しかけました。止めたばかりの録音を、イトは未来まで待てずに再生します。スピーカーから出たのは、さっきの自分の笑い声でした。しまってあった空気ではなく、数字から作り直した、新しいふるえです。

次に録音を再生するときは、長さとファイルサイズを見てみてください。かけ算ひとつで、その声が1秒に何ビットで書かれているかが分かります。

この記事について

LAB WHITEBOARD

音声データの仕組みを一文で説明してみよう

「音声データとは何かを一文で言い、サンプリング周波数・ビット深度・チャンネル数のかけ算で1分あたりの容量を出し、MP3・AAC・WAV・FLACの違いを圧縮と入れ物に分けて説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。