テレビのアニメはどこから来る? / 第3話

第3話:パケットはなぜ小さい?

切って運んだ一枚が受取台に並ぶと、四角い穴が一つあいていた。門が閉じるまで、あと少し。偽物の色で埋めれば、今すぐ完成する。データを小箱に分けて運ぶパケットのしくみを、配送路でたどります。

パケットデータの分割宛先配送路6分更新

受取台の夕焼けには、四角い穴が一つあいていた。

仮面へ伸びる手の所。そこだけが黒い。

イトの映像を運んだ青い小箱は、ぜんぶで十二個。受取台にあるのは、十一個。門が閉じるまで、あと二十七秒。

「近くの夕焼け色で埋めれば、今すぐ完成します」

受取台が、偽物の色を差し出した。イトは手を伸ばさなかった。

九十秒前、長い列は門に入らなかった

「切るの?」と聞いたまま、イトの手は止まっていた。空の枠は、腕にかけたままだ。

門の前でほどいた一枚は、長い光の列になった。元の札は、もう手元にない。残った長い列を、今度は壊さずに運びたい。

けれど配送路の練習門は、細く短かった。光の列を一つの巨大な箱に詰めると、入口の枠につかえる。その後ろでは、迷子を呼ぶ短い音声の箱が待っていた。

門が閉じるまで、九十秒。

イト

映像を先にぜんぶ通したら、後ろの声が間に合わない

ユイ

でも、ばらばらに切っただけだと、どの絵のどこだか分からなくならない?

ピコ

だから、小さくするだけじゃ足りない。運ぶための情報も一緒に持たせるんだ

転がり出ていた小箱は、数えると十二個あった。

パケットには中身と荷札がある

ピコは、パケットと呼ばれる小箱を一つ、上下に分けて見せた。大きい部分には、光の列を入れる。こちらは、運びたい中身だ。小さい帯には、届けるための情報を入れる。こちらが荷札になる。

イト

箱を小さくしたぶん、荷札も十二枚いるんだ

マコト

中身だけを送るより、少し荷物は増えるね

ピコ

うん。それでも、通れる大きさにして、別の荷物と同じ道を使える

イトは十二個の箱へ分けた

イトは、長い光の列を十二の範囲に区切った。切る場所を一つずつ確かめ、青い小箱の大きい部分に入れる。外側には、練習台が用意した宛先の帯を巻く。内側には、元の流れでどの位置だったかを示す順番札を入れた。

「この音声も、間に入れていい?」

イトは後ろの橙色の小箱を指した。ピコがうなずく。

イトは青い箱を三個送り、橙色の箱を一個通し、また青い箱を送った。巨大な映像箱で門を塞がなかったから、迷子を呼ぶ声は先に向こう側へ届いた。青い箱も止まらない。ただし、同じ順番では進まなかった。

一本道ではない

配送路は途中で三つに分かれた。青い箱の多くは中央の道へ進む。二個は左の橋へ回った。最後の一個だけが、混み始めた中央を避けて、長い右の坂へ送られた。イトは追いかけようとしたが、透明な壁に止められた。

イト

ぼくが送った順番が変わっちゃう

ピコ

ネットワークは、送った順に必ず届く一本のベルトじゃない

ユイ

じゃあ、受け取る側が順番を見直すの?

ピコ

その必要がある通信ではね。運ぶ道だけに、順番どおりや必ず届くことをぜんぶ任せてはいないよ

イト

小箱にすれば、自動で完全になるわけじゃないんだ

イトは、遠回りする一箱を見失った。

一つだけ空いた映像

受取台には、青い箱が次々と着いた。着いた順ではなく、内側の順番札が示す位置に中身を置いていく。

夕焼け。主人公の肩。仮面の輪郭。

十一個を置いたところで、再構成が止まった。仮面へ伸びる手の部分だけが、四角く黒い。

受取台が三つの方法を出した。近くの夕焼け色で空白を埋めれば、見た目だけはすぐ完成する。後の箱を一つ前へ詰めれば、黒い穴は消える。けれど、その後の位置がすべてずれる。空白を残して正しい箱を待つなら、映像は未完成のままだ。門が閉じるまでに届く保証もない。

ユイ

遠回りした箱、まだ来るかもしれない

マコト

でも、門が閉じるまで、もういくらもないよ

ピコ

イト。どの映像を受け取るかは、きみが決めて

イトは、偽物の夕焼け色を見た。これを置けば、今日ずっと追ってきた最後の一枚を見られる。けれど、仮面へ伸びる手は、元のデータにはなかった色になる。

「空白のまま待つ」

イトは偽物の色を受取台に戻した。後ろの箱を動かさず、黒い四角の場所だけを空けた。

イトが夕焼け映像の黒い空白を推測で埋めず、遠回りの道から近づく最後の青い小箱を受取台の前で待っている
偽物の色で埋めずに、最後の一箱を待つ。

最後の一箱

残り十二秒。右の坂は、まだ暗い。門の向こうで、迷子を呼ぶ声が最後まで流れた。

残り三秒。

右の坂から、青い光が一つ落ちてきた。遠回りした小箱だった。受取台は順番札を読み、空けてあった場所に中身を置く。

黒い四角が、指先に変わった。夕焼けの一枚が、元のデータどおりにそろった。

門が閉じた。

イトはすぐに笑わなかった。二十七秒間、完成した映像を見られなかった。十二個の箱には、それぞれ荷札のぶんの荷物も増えた。それでも、偽物の色は一つも混ざっていない。

今日は、遅れた一箱が閉門前に届いた。

宛先のない本物の門

受取台から、十二枚の外側の帯が外れた。練習中は、台が宛先を自動で入れていたらしい。

その先に、本物の配送門がある。イトが青い小箱を置くと、門は赤く光って返した。宛先の欄が空いている。順番が分かっても、届ける相手が分からなければ道は選べない。イトは、完成した夕焼けの一枚より、空の宛先欄を見た。

「この小箱は、どこの誰に届けるの?」

閉じた門の奥で、無数の住所札が一斉に光った。

次回:データの住所ってどこにある?

ラボのテレビを示す宛先の札は、二枚あるという。一枚は青く、もう一枚は金色だ。

テレビは一台なのに、どうして住所が二つあるのだろう。

第4話「データの住所ってどこにある?」へ →


小箱の荷札には、宛先のほかにも書きこまれるものがあります。何が入るのかは、パケットとはの「パケットに付く荷札」の表で確かめられます。

この物語を、解説で深める

第3話で生まれた疑問を、解説記事で少し深く見ていきます。物語で感じた不思議さを残したまま、言葉と仕組みを順番に整理しましょう。

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