テレビのアニメはどこから来る? / 第4話

第4話:IPアドレスは誰のもの?

送った箱が、足もとに戻ってきた。同じテレビなのに、住所の札は二枚。配送の許可は、あと一回。どちらを選べば届くのか。二枚を見比べながら、IPアドレスが何の住所なのかを確かめます。

IPアドレス宛先ネットワークルーター5分更新

青い小箱が、イトの足元へ戻ってきた。

中には、さっき最後まで待った夕焼けの一枚が入っている。箱は壊れていない。宛先札だけが、赤く光っていた。「この宛先は、次の道へ渡せません。」

配送許可は、あと一回。門が閉じるまで、四十秒。

「同じテレビの住所を選んだのに」

イトの前には、ラボのテレビを示す宛先札が二枚あった。

同じテレビなのに、住所が二つ

一枚は青い。すぐ近くまでしか線が伸びていない。もう一枚は金色。いくつもの配送所を越え、遠くのラボまで線が続いている。どちらの札にも、同じ古いテレビの印がある。

イトは最初、短く見える青い札を選んだ。近い道のほうが早いと思ったからだ。けれど小箱は、最初のルーターで止められた。

イト

テレビが一台なら、住所も一つじゃないの?

ユイ

同じテレビに二つ出てると、どっちを使うか迷うな

ピコ

IPアドレスを、機械に貼りついた永久の表札だと思うと迷うんだ

IPアドレスは、人や機器の永久名ではない

ピコが、テレビの形を透明にした。中から、有線の差しこみ口と無線の入口が現れる。一つの入口が、住所をいくつか持つこともできる。

イトは二枚の札を見直した。「じゃあ住所って、テレビのじゃなくて、入口の?」

ピコがうなずいた。同じ機械でも、つなぐ入口やネットワークがちがえば、使う住所は変わることがある。

青い札は、近くで使う住所だった

青い札の線は、最初のルーターまでしかない。

マコト

青い札が間違いなのではなく、使える範囲がちがったんだね

ユイ

同じ部屋の入口では使えても、遠い配送所からは届かない

イト

短い住所じゃなくて、近く用の住所だったんだ

金色の札は、より広い範囲で経路を選べる、遠くまで届く住所だった。青と金色でちがうのは、どこからどこへ送るかに、届く範囲が合っているかどうかだ。

昨日の札も現れた

案内台の端から、灰色の札が一枚出てきた。アニメが止まる前に、控えられていた宛先だ。テレビの印は同じ。けれど札の線は、途中で途切れている。有効だった期間が終わっていた。

残り一回、どの札を付ける?

配送許可は、あと一回。門が閉じるまで、十七秒。

案内台が三つの方法を出した。同じテレビだから、青い札をもう一度使う。前に使えた灰色の札を使う。今いる場所と届く範囲を確かめ、現在の金色の札を使う。

青い札は、今いる配送所から先へ出られない。灰色の札は、もう有効な経路を示していない。金色の札はラボまで線が続く。けれど、見たことのない長い宛先だった。

ユイ

覚えてるほうを選びたくなる

マコト

でも、覚えていることと、今届くことは同じじゃない

ピコ

イト。残り一回を、どの根拠に使う?

イトは、テレビの印を見なかった。まず、自分の小箱が今いる配送所を指で押さえた。次に、青い札の線が最初のルーターで終わることを確かめる。灰色の札には、有効な線がない。最後に、金色の札が現在のテレビの入口まで続いていることを見た。

「今、ここから届く金色の札にする」

イトは青と灰色の札を外した。現在の金色の札を、自分の小箱へ巻いた。

イトが近く用の青い宛先札と期限切れの灰色札を外し、遠いラボのテレビまで光路が続く現在の金色札を青い小箱へ巻いている
見なれた札ではなく、今ここから届く札を箱に巻く。

住所を見て、次の一歩だけ選ぶ

イトは小箱を門へ入れた。最初のルーターは、金色の札の宛先を見た。世界中の道順を一本ずつ箱へ書き込むのではない。宛先のまとまりを手がかりに、次に渡す方向を選ぶ。

小箱は右の道へ送られた。次のルーターも、その次のルーターも、宛先に近づく次の一歩を選ぶ。小箱がラボのネットワークへ入った。有線でつながった古いテレビの入口が、金色の札に反応する。

残り一秒。

夕焼けの映像が、遠くのラボのテレビだけに現れた。門が閉じた。ユイのノートパソコンにも、近くの別画面にも出ていない。選んだ宛先の入口へ届いた。

覚えやすい住所を手放す

イトの手元には、外した青と灰色の札が残った。どちらも偽物ではない。青は近くで使える。灰色も、昨日までは経路を持っていた。でも、今回の送信には使えなかった。イトは、短く見える札や覚えている札を選べばいい、という簡単な答えを手放した。

人は、この長い札を覚えない

テレビには夕焼けが映っている。その横には、長い金色の宛先が光っていた。イトは一度読もうとして、すぐに諦めた。

「毎回これを入力するの?」

空中に、人が読める短い名前札が現れた。名前札は覚えやすい。けれど、現在の金色の札とはまだ線がつながっていない。

ユイが、小さく言った。「名前から、今使える住所を調べるしくみが要るんだ」

イトは外した二枚の札を案内台へ置き、浮かぶ名前札を見た。

「名前は変わらないのに、住所が変わったら、誰が探し直すの?」

名前札の向こうに、無数の案内所が灯った。

次回:名前と住所はどうつながる?

イトが届けたい先の名前には、よく似た名前がもう一つある。ちがうのは、点が一つと、横線が一つだけ。

見た目がそっくりな二つの名前は、同じ住所につながっているのだろうか。

第5話「名前と住所はどうつながる?」へ →


家の中で使うIPアドレスと、外のインターネットから見えるIPアドレスは、分かれている場合があります。使う範囲がどう違うのかは、IPアドレスとはの「プライベートIPとグローバルIPで使う範囲が違う」の節で確かめられます。

この物語を、解説で深める

第4話で生まれた疑問を、解説記事で少し深く見ていきます。物語で感じた不思議さを残したまま、言葉と仕組みを順番に整理しましょう。

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