テレビのアニメはどこから来る? / 第5話

第5話:DNSは誰に聞く?

住所の答えは、一秒で返ってきた。けれど名前札をよく見ると、点と横線が一つちがう。配送の許可は一回きり、残りは五十秒。速い答えを、このまま使っていいのか。

DNSドメイン名名前解決IPアドレス5分更新

答えは、一秒で返ってきた。

金色の住所の札。その下に、緑の文字が光る。「控えに記録あり。すぐ配送できます。」

イトが小箱へ巻こうとした瞬間、ユイが名前札を二枚に分けた。

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速い答えが返ったのは、下の名前だった。イトが届けたいのは、上の名前だ。配送許可は一回。残り五十秒。

点一つと横線一つは、同じ名前ではない

二枚は、離れて見るとよく似ている。けれど点で区切ると、構造がちがう。上の名前は、三つに分かれる。下の名前は、二つだ。横線でつながった所は、切れずに一つのまとまりになる。いちばん後ろの点まで書いたものが、完全な名前だ。

イト

見た目が近くても、棚の場所は別なんだ

ユイ

点で区切った一つずつがちがえば、聞く名前もちがうんだ

ピコ

そう。DNSは『だいたい似ているほう』を探すしくみではないよ

DNSは、一冊の住所録ではない

イトは、上の名前札を配送門へ直接入れた。門は動かない。名前は人が扱いやすいけれど、箱の宛先の欄へそのまま入れるものではない。名前に結びつく住所を、先に案内所で聞く必要がある。

ピコが見えるようにしたのは、一冊の住所録ではなく、三つのカウンターだった。手前は、イトの側から名前を受け取る入口。まん中は、問い合わせを引き受けて、答えか次の案内を探して回る役。奥には、名前の範囲ごとの担当がいて、正式な記録を持っている。

速い答えは、別の名前には正しかった

緑の控えの箱を開くと、記録の見出しが見えた。下の名前だ。答えは、まだ期限のうちにある。偽物でも、壊れた記録でもない。ただ、イトが聞きたい名前とはちがう。控えは、前に得た答えをしばらく取っておいて、次の問い合わせに早く答えるためのものだ。

イト

近道が悪いんじゃなくて、別の名前の近道だったんだ

マコト

早さだけを見て、質問を取り違えたらいけないね

ユイ

控えを見るときも、何の名前への答えかが先だね

残り三十八秒。

イトが選べる三つの道

案内台に、三つの方法が現れた。一つめは、一秒で返った下の名前の控えを使う。速いけれど、別の名前に結びついた宛先だ。二つめは、テレビへ届けたときの金色の札をじかに使う。案内を待たなくていいが、さっき見たように、住所が今も同じとは限らない。三つめは、完全な名前を確かめて、その名前で聞く。時間がかかるうえ、残りの時間で担当の答えに着く保証はない。

イトは二枚の名前を、点ごとに指で区切った。上は三つ。下は二つ。

「ぼくが聞きたいのは、上の完全な名前」

イトは、速い答えの箱のふたを閉じた。video.blue.example. の名前札だけを、手前の入口へ渡した。

イトが似た形の別名キャッシュ箱を閉じ、ドットで三つに区切られた正しい名前札だけを青いDNSリゾルバーの入口へ渡している
速い答えのふたを閉じて、聞きたい名前を確かめて渡す。

答えではなく、次の案内が返る

まん中のカウンターは、まず自分の控えを探した。上の名前に使える答えはない。そこで、名前の後ろの区切りから順に、案内をたどっていく。

最初に聞いた担当は、住所を返さなかった。代わりに、次に聞く担当を示す。いちばん後ろの区切りを受け持つ担当だ。その担当も、もう一つ前の区切りまでを受け持つ担当を示す。答えはここではなく、次はこちら。まん中のカウンターは、イトの代わりに、その先へ問い合わせを進めた。

三番めで、上の名前の記録を持つ担当に着いた。担当は、自分が受け持つ範囲の記録から答える。

残り四秒の金色の札

残り四秒。

担当から、金色の札が返った。札の見出しは、イトが渡した完全な名前と一致している。まん中のカウンターは、その答えを手前の入口へ返し、期限と一緒に自分の控えにも残した。

イトは、その金色の札を青い小箱へ巻く。配送門が開いた。小箱は、上の名前の練習受取台へ届いた。一秒で答えた下の名前の道は、閉じたままだ。夕焼けの一枚は、上の名前に結びついた受取台だけに現れた。

時計がゼロになった。イトは、ふたを閉じた箱と、届いた一枚を見比べた。

DNSが答えたあとにも、残ること

返ってきた金色の札にも、期限が付いている。期限のうちなら、同じ名前を聞かれたとき、控えから早く答えられる。期限が過ぎれば、もう一度、今の住所を確かめる。

それに、返ってきたのは宛先だけだ。「アニメの続きを送ってほしい」というお願いまでは入っていない。練習受取台には、夕焼けの一枚だけがある。その先の映像は、まだ届かない。

イトの前に、空の封筒が現れた。宛先は書ける。中身は空だ。

「住所が分かっただけじゃ、何をしてほしいか伝わらない」イトは空の封筒を開いた。

「次は、この中にお願いを書くの?」

封筒の向こうで、お願いと返事を分ける二つの扉が開いた。

次回:お願いの言葉はどう届く?

お願いの券は、二枚しかない。同じ宛先の中にも、頼めるものはいくつもあるという。

どれを頼めば、続きが届くのだろう。

第6話「お願いの言葉はどう届く?」へ →


名前から住所が見つかるまでに、聞く相手は何度か変わります。だれがだれへ、どの順に聞くのかは、DNSの仕組みの「名前解決の流れ」の図でたどれます。

この物語を、解説で深める

第5話で生まれた疑問を、解説記事で少し深く見ていきます。物語で感じた不思議さを残したまま、言葉と仕組みを順番に整理しましょう。

DNSの仕組みとは?サイトの名前から番号を調べる流れを5枚の図でを読む