TERM PRIMER
ゲームの有線と無線|先に知っておく言葉
イト
無線でよくない?ケーブルが部屋を横切るの、じゃまなんだけど
ユイ
でも大会は有線だって聞きました。何が違うのか、そこが説明できなくて
ここで言う有線と無線は、ゲーム機やPCをLANケーブルでつなぐか、Wi-Fiでつなぐかの話です。コントローラーを有線にするか無線にするかは別の問いなので、後ろの節で分けて答えます。
ゲームの有線と無線は、毎日対戦するなら有線がよく、ルーターと同じ部屋で遊ぶなら無線でも足ります。
差が出るのは速さではなく、遅れが毎回そろうかどうかの安定性です。有線は電波の干渉や送り直しが起きにくいので、遅れが一定に近づきます。無線は条件がそろえば足りますが、まわりの状況しだいで揺れが出ます。
第29話「レイテンシはどこで増える?」では、操作の往復時間を区間ごとに見ます。有線か無線かで変えられるのは、そのうち家の中の区間だけです。
ゲームの有線と無線はどっちがいい?場面で決める
自分の遊び方を、上から順に当てはめます。最初に当てはまった行が第一候補です。
- 対戦を毎日する、順位や勝敗を気にする: 有線
- ルーターと同じ部屋か隣で遊ぶ、または遊ぶのは週に数回で協力プレイ中心: 無線のままでよい
- 端末にLAN端子がない、部屋にケーブルを通せない: 無線を整える
家族が同時に動画やダウンロードを使う時間帯に対戦するなら、二行目でも有線へ寄せます。有線が毎日の対戦に向く理由は、速いからではありません。
有線が無線より有利な理由は通り道が自分専用だから
有線はケーブルの中を電気信号として進み、無線は空間を電波として進みます。ケーブルを通るのは、その線につないだ機器だけです。無線は同じ電波の通り道を、家の中の他の端末や近所の機器と分け合います。
たとえるなら、有線は建物の直通の廊下、無線は人が行き交う広場です。広場でも向こう側へ着けますし、すいていれば廊下と変わりません。混んでくると、足が止まる瞬間が生まれます。
広場で実際に起きているのは「人を避ける」ことではなく、送り直しです。電波が弱かったり他の通信と重なったりして届かなかったデータを、もう一度送ります。同じ通り道を使う機器は順番に送るので、端末が増えるほど自分の番を待つ時間も伸びます。この余分な時間が、操作の往復のタイムに乗ります。
画面のむこう側では、ゲームの操作がパケットという小さなデータになって、1秒に何十回も行き来しています。この列のうち数個が遅れて届くだけで、動きは引っかかって見えます。勝負が数十ミリ秒で決まる場面では、たまに出る大きな遅れが一回でも致命的です。大会で有線が選ばれるのは、その「たまに」が起きにくく、人の動きで状態が変わらないからです。
数個の遅れが問題なら、「速い無線」に替えれば済むように思えます。ところが、速さと引っかかりは別の物差しです。
有線と無線の差は速さより遅れの安定性
最近の無線は、動画やダウンロードのようにたくさん受け取る使い方なら、条件がよければ困りません。ゲームの対戦で要るのは大量のデータではなく、小さなデータが遅れずにそろって届くことです。だから有線に替えたとき、速度の数字は変わらなくても引っかかりだけが減るのは、自然なことです。
| 見るところ | 有線 | 無線 |
|---|---|---|
| 通信量(Mbpsなど) | 安定して出やすい | 条件がよければ十分出る |
| 遅れの平均 | 小さくなりやすい | 環境しだいで少し乗る |
| 遅れの揺れ | 小さくそろいやすい | 距離や混雑で大きくなる |
| 置き場所の自由 | ケーブルの届く範囲 | 選びやすい |
自分の家の数字を見るなら、ゲームのpingが高い原因は?の測り方をそのまま使えます。見るのは平均より、揺れの幅です。
イト
じゃあ有線にしたら勝てるようになるの?
ユイ
勝てるかは別ですね。でも、家の外の回線が混んでいたら、有線にしても同じではないですか?
有線と無線で変わらないのはルーターから先の回線
ユイの心配は当たっています。有線と無線で違うのは、家の中の最後の数メートルだけです。ルーターから先、家の外へ出る回線、そこからゲームのサーバーまでの道のりは同じです。外の回線が細い、または混んでいるなら、どちらを選んでも遅い状態は残ります。サーバーが地球の反対側にあれば、その距離ぶんの往復時間もどちらでも消えません。
ここを外すと、買い物で遠回りします。有線は家の中の揺れを減らす道具で、外側の事情までは変えられません。家の中で変えられる分だけを直す。そう決めると、無線のままでも打てる手が見えてきます。
無線のままゲームを安定させる置き場所と機器
無線で揺れが出る原因は、距離・壁・まわりの通信の三つです。直す順番も同じで、ルーターとの距離を縮める、間にはさまる壁を減らす、電波の通り道を変える、の順に試します。ラボでも、机の裏に隠していたルーターを棚の上へ出しただけで、同じ部屋の数字が落ち着いた日がありました。部屋の配置を変えられないなら、ケーブルを長く這わせるより、ルーターの置き場所を見直すほうが先です。電波がどう届くかはWi-Fiの仕組みを読むと、置き場所の理屈がつながります。
機器の組み合わせも確かめます。ルーターと端末が新しい規格の無線に対応していれば、無線側の揺れはもともと小さめになります。有線にする前には、端末にLAN端子があるか、その規格は何か、ルーターまでの経路に別の機器がはさまっていないかを一度見ておくと、買ってから気づく遠回りを防げます。
置き場所を直しても引っかかるなら、ケーブルを一度つないで試す価値があります。つないだのに変わらなかったときは、見る順番があります。
有線にしてもゲームが引っかかるときの確認
ケーブルをつないだのに引っかかる。そのときは、Wi-Fiの電波だけでは説明がつきません。順番に切り分けます。
- 有線と無線で同じ相手へpingを測り、数字を並べる
- 数字が変わらないなら、ルーターの負荷、家の外の回線、相手側の順に疑う
- 時間帯を変えて測り、混雑の影響を見る
- サーバーの地域と、いっしょに遊ぶ人の状態を確認する
有線に替えても数字が動かないのは、失敗ではありません。家の中の電波の揺れが主因ではなかったと分かった、切り分けが一つ進んだ状態です。原因の全体像はオンラインゲームのラグはなぜ起きる?にまとめてあります。
ここまで、コントローラーの話は出てきませんでした。別の問いだからです。
コントローラーの有線と無線はどっちがいい?
コントローラーの有線と無線は、回線の話とは別です。無線コントローラーの電波が飛ぶのは、手元とゲーム機のあいだの短い区間だけで、家の外の回線は通りません。対戦の引っかかりを直したいとき、まず疑う場所ではありません。
選ぶ軸は、充電と取り回しです。
- 有線: 充電切れがない。遊べるのはケーブルの長さの範囲
- 無線: 座る場所を選ばない。充電が切れると止まる
ケーブルでもつなげるコントローラーなら、有線にして同じ場面を試すと、手元の差はその場で分かります。回線のほうを測るなら、次の3行で足ります。
有線と無線を測って比べる3行のワーク
ラボでも同じことを試しています。手順は3行です。
無線のまま: ping __ms/揺れ __(大きい・小さい)
有線に変えて: ping __ms/揺れ __(大きい・小さい)
同じ時間帯・同じ相手で測ったか: __
大事なのは、同じ時間帯に、同じ相手へ測ることです。夜と昼で比べると、有線の効果と混雑の差が混ざります。ユイはこの3行を書いたあと、少し手を止めました。数字が思ったほど動かない日もあったからです。その日の数字は、家の外を疑う材料になりました。
ゲームの有線と無線でよくある質問
Q1. 有線にすれば、ゲームの遅れは消えますか?
A. 消えません。外の回線やサーバーまでの距離は、どちらを選んでも同じです。減るのは、家の中で起きる遅れの揺れです。
Q2. 無線のままで問題ない場面はありますか?
A. あります。ルーターと同じ部屋か隣で遊ぶ、対戦は週に数回で協力プレイ中心、という条件なら無線で足ります。
Q3. コントローラーを有線にすると、ラグは減りますか?
A. 回線の引っかかりは変わりません。コントローラーの電波は手元とゲーム機のあいだだけで、家の外の回線を通らないからです。充電切れをなくしたいなら、有線が向きます。
有線か無線か、ケーブルを引く前の一歩
イトが気にしていた「部屋を横切るケーブル」は、家の中の区間を直す道具です。廊下を選ぶか、広場を選ぶか。どちらを歩いても、その先の街までの距離は変わりません。だから、家の中で変えられる分だけを見極めて、残りは別の場所を確かめる。そう分けられたら、ケーブルを引くかどうかは自分で決められます。
今日できる一歩は、無線のまま同じ相手へpingを一度測り、数字と時間帯を書いておくことです。ケーブルを買うかどうかは、そのあとで決めて間に合います。
LAB WHITEBOARD
ゲームの有線と無線を一文で説明してみよう
「回線の有線と無線の差が速さより遅れの安定性にあることを知り、対戦の頻度とルーターとの距離から自分で選べる。コントローラーの有線と無線は別の問いだと分けて説明できる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。



