インフォスティーラーは、端末に保存されたパスワードや個人情報などを盗む不正なソフトです。情報窃取型マルウェアとも呼ばれます。端末の問題と、盗まれた情報の悪用は、分けて対処する必要があります。
「怪しいサイトにパスワードを入力していないのに、不正に使われた」という場合でも、端末の中に残る情報を盗まれる経路があります。ただし、不正ログインがあったという事実だけで、原因をインフォスティーラーと決めることはできません。
知っておきたいのは、端末の問題を取り除くことと、外へ渡ったログイン情報を使えなくすることは別の対応だという点です。
インフォスティーラーが盗む情報はパスワードだけではない
名前は、情報を表すinformationと、盗む者を表すstealerから来ています。マルウェアは、利用者や機器に害を与える不正なソフトの総称です。そのうち、情報を盗む働きに注目した呼び方がインフォスティーラーです。
狙われる情報は種類や端末の状態によって異なります。すべての感染で、次の項目が全部盗まれるわけではありません。
| 端末にある情報の例 | 悪用されると起こり得ること |
|---|---|
| 保存されたID・パスワード | その組み合わせでアカウントへ入ろうとされる |
| ログイン状態を保つCookieなど | 有効な情報なら、ログイン済みの利用者として扱われる場合がある |
| 自動入力用の氏名・住所・カード情報 | なりすましや不正利用の材料になる |
| 文書や画面、アプリ内の情報 | 非公開の内容を知られたり、次の攻撃に使われたりする |
Cookieはすべてパスワードの代わりになる?
Cookie(クッキー)は、Webサイトがブラウザへ保存する小さな情報です。表示設定などにも使われ、すべてがログイン用というわけではありません。詳しい役割はCookieとは何かで説明しています。
ログインした後、サイトが「さっき確認した利用者だ」と判断するための情報を、Cookieなどに持たせることがあります。このログイン状態を保つ仕組みに使われる情報が盗まれ、さらに有効なものとして受け付けられると、パスワードを改めて入力せずに使われる可能性があります。
FBIも、盗まれたログイン用Cookieによる不正利用を注意喚起しています。
そのため、パスワードだけを守ればすべて解決するわけではありません。ただし、情報の期限やサービス側の確認によっては、コピーしても使えない場合があります。「どんなCookieでも盗めば入れる」という仕組みではないのです。
インフォスティーラーは偽ソフトや偽認証から入り込む
よく知られているソフトのように見せた偽物、添付ファイル、見慣れた認証画面を装う案内などが、入口になる場合があります。
たとえば、「人間であることを確認するため」「表示の問題を直すため」と説明し、利用者に文字の指示を貼り付けて実行させる手口があります。これをClickFix(クリックフィックス)と呼びます。見た目は確認作業でも、実際にはパソコンに別の処理をさせる指示かもしれません。
NICTのClickFix・FileFixの観測報告は、見慣れた画面で正規の操作だと思わせる手口を説明しています。報告の公開は2026年4月、観測した時期は2025年12月です。これだけで、すべての不正ログインの原因や現在の感染数が分かるわけではありません。
防ぐときは、「画面が本物らしいか」だけでなく、「何をさせようとしているか」を見ます。
- ソフトは、開発元を確かめた公式の配布先から入手する。
- 認証や修復を理由に、意味の分からない指示を実行しない。
- 保護機能を切るよう求められたら、その案内に従って先へ進まない。
- OSやブラウザ、利用するアプリを更新する。
会社の作業で必要そうに見える場合も、案内の画面に書かれた連絡先だけを頼らず、いつもの担当へ確認します。急いで作業を終えたい気持ちを利用されるため、「自分は詳しくないから指示に従おう」と思ったところで一度止まることが役立ちます。
パスワード変更だけでインフォスティーラー対策は終わる?
盗まれたパスワードを変更することは大切です。ただし、端末に不正なソフトが残っていると、新しく入力した情報を再び盗まれるおそれがあります。
また、パスワードの変更で、すべてのログイン状態が自動的に無効になるかは、サービスの仕組みによって違います。公式の「不正アクセスされた場合」の案内で、ログイン中の端末や接続済みのアプリ、復旧用の連絡先まで確認します。
不正なソフトなど、情報が盗まれる原因を調べて対処する
盗まれたパスワードやログイン状態を無効にし、変更された設定を確かめる
一方への対応だけで、もう一方まで解決するとは限りません。管理担当やサービスの公式手順に従います。
Googleのアカウント保護の案内も、パスワードだけでなく、利用端末、不審な操作、復旧用情報、メール転送の設定、有害なソフトの確認を扱っています。別サービスでは、その提供元の手順を使います。
多要素認証は役に立たなくなるのか
多要素認証は、パスワードだけでなく、手元の機器など別の要素も使って本人を確かめる仕組みです。パスワードだけが盗まれた場合の防御として重要です。二要素認証の基本も確認できます。
一方、ログインが終わった後の情報を盗まれる問題には、端末を守ることや、盗まれたログイン状態を無効にすることも必要になります。多要素認証を外す理由にはなりません。守る場所が違う対策を組み合わせます。
また、手元のCookieを削除する操作だけでは、攻撃者の手元にあるコピーまで消えません。アカウント側で無効化する対応と区別してください。
インフォスティーラー感染の疑いは端末とアカウントを分けて対処する
不審なソフトを動かした、確認画面に従って指示を実行してしまった、身に覚えのない利用が見つかった。こうしたときは、原因を一人で断定するより、何をしたかを残して相談します。
会社・学校の端末なら、ネットワークからの切り離しを含む組織の手順に従い、管理担当へすぐ連絡してください。個人の端末で感染が疑われる場合も、通信を切り離し、新しいパスワードや支払い情報の入力を続けないことが大切です。初期化やファイルの削除を急ぐ前に、端末のメーカーや信頼できる公式窓口へ相談します。
アカウントの保護は、問題の疑いがない別の端末などから、公式の復旧窓口を使います。借り物の共用PCへ大切な認証情報を次々に入力することは避けましょう。安全に操作できる環境がない場合は、その点も相談先へ伝えます。
| 相談するときに残す情報 | 残し方の例 |
|---|---|
| 時刻と直前の操作 | いつ、何を開き、どの操作まで行ったかをメモする |
| 表示された内容 | 画面を別の端末で撮るなどして、相談先へ説明できるようにする |
| 心当たりのない利用 | サービス名と通知の時刻、利用履歴を整理する |
| 使っていたアカウント | その端末で仕事用・個人用のどちらを使っていたか伝える |
記録にパスワードや個人情報が写っている場合は、公開のSNSへ投稿しないでください。また、画面に警告が出なかったことだけで、感染していないとは判断できません。反対に、動作が遅いことだけで感染と決めつけることもできません。
滋賀県警の注意喚起も、保存情報を盗む手口を知り、更新や多要素認証などを組み合わせる大切さを伝えています。
覚えておきたいのは、「パスワードを変えたから終わり」とせず、端末に残る問題と、すでに外へ渡った情報を分けて考えることです。今、不審な操作に心当たりがあるなら、まずその時刻と内容を一つのメモにまとめ、公式の相談先へつなげてください。




