ClickFix(クリックフィックス)は、認証やエラーの修復に見せかけて、利用者自身に不正な処理を実行させる手口です。別の画面に命令を貼り付けて実行するよう求められたら、操作を止めてください。
「人間であることを確認するため、別の画面を開き、この文字を貼り付けて実行してください」。そんな案内が出たら、言われたとおりに進めず、操作を止めてください。確認のために見える作業が、端末を動かす指示になっている場合があります。
すでに操作した場合も、慌ててやり直す必要はありません。記事の後半で、どこまで操作したかを相談先へ伝えるための整理を紹介します。
ClickFixとは認証や修復を装って操作させる手口
Webサイトで「私はロボットではありません」と表示され、確認を求められたことはないでしょうか。人による利用か、自動のプログラムによる利用かを区別する仕組みの一つに、CAPTCHA(キャプチャ)があります。
ClickFixでは、こうした見慣れた表示や、「表示できないので修復してください」という案内を偽装します。困っている人に解決手順を示す形を取り、不正な操作へ進ませるのが特徴です。
ClickFixという名前のウイルスが一つあるわけではありません。利用者を操作へ誘う手口の名前であり、その先で入る不正なソフトや被害は、事例によって異なります。
NICTの観測報告では、偽の認証画面から、端末上で指示を実行させる流れが確認されています。2026年4月に公開された、2025年12月の観測です。画面に目立つ変化がないまま処理が進んだ例もあり、「何も起きなかったように見えた」だけでは判断できません。
認証や修復の案内を本物のように見せる
別の画面を開いて文字を貼り付けるよう求める
従うと、端末上で望まない処理が動くおそれ
代表的な流れの模式図です。画面を見たことやコピーしたことだけで、実行済みと断定はできません。
不安をあおる警告だけでなく、「あと一手間で見られる」という案内にも注意が必要です。続きを早く見たい、仕事を止めたくないという気持ちが、説明を確かめる時間を短くしてしまうからです。
偽CAPTCHAでコマンドの貼り付けを求める理由
コマンドは、コンピューターへしてほしい処理を文字で伝える指示です。正規の作業でも使いますが、内容によっては、ソフトの取得や起動なども行えます。
文字をコピーしたときに一時的に置く場所を「クリップボード」と呼びます。ClickFixでは、ボタンを押した際などに不正な指示をここへ入れ、その後、利用者に貼り付けて実行させる例があります。
利用者には、「チェックした」「案内されたキーを押した」としか見えないかもしれません。しかし、端末側では、貼り付けられた内容を指示として受け取ることがあります。
| 目に見える案内 | 確かめたいこと |
|---|---|
| 人間か確認するため、と言われた | なぜ端末の実行画面を開く必要があるのか |
| 修復のために文字を貼り付ける、と言われた | その指示を誰が出し、何を実行するのか |
| 保護機能を止めるよう言われた | 解決を口実に、守る機能を外させていないか |
| 有名な会社のロゴがある | ロゴだけで正規の案内だと判断していないか |
神奈川県警の防止資料も、確認画面の後に続く貼り付け・実行の指示を、警戒する目印に挙げています。
チェックボックスがあれば偽物なのか
チェックボックスや画像選択による確認は、正規のサイトでも使われます。それだけを見て偽物と決めることはできません。反対に、よくある表示に似ていれば安全とも言えません。
見るべきなのは、Webサイトの確認から、端末で何かを実行する操作へ進ませようとしていないかです。キーの組み合わせを全部暗記するより、この変化に気付けると役立ちます。
ターミナルなどの文字の画面自体が危険なわけでもありません。コンピューターが指示を処理する基本は、プログラムはどう動くかで説明しています。不明なWebページが示す指示を、その意味を確かめず実行しないことが大切です。
ClickFixとFileFixは誘導する画面が違う
FileFix(ファイルフィックス)は、ファイルを開く、受け取るといった操作に見せかけ、指示を実行させる関連の手口です。NICTの報告では、ファイルを扱うエクスプローラーの画面へ誘導する例が紹介されています。
名前や画面が変わっても、利用者に正規の作業だと思わせて、不正な処理をさせる点は共通しています。
| 手口 | 口実や画面の例 | 共通して止まる目印 |
|---|---|---|
| ClickFix | 偽の認証、表示エラーや不具合の修復 | 意味の分からない文字を貼り付け、端末で実行するよう求める |
| FileFix | ファイルを受け取るための操作案内 | ファイル操作に見せかけ、別の処理を実行させようとする |
これは代表例の比較です。すべての攻撃が同じ画面や手順になるわけではありません。また、ファイル名やアドレスをコピーする操作が、すべて攻撃という意味でもありません。
フィッシングは、偽の案内で情報を入力させるなどして盗む手口です。ClickFixでは、入力する情報だけでなく、「その案内で自分の端末に何をさせているか」にも注意を向けます。
ClickFixの操作をしてしまったときの相談と記録
操作の内容によって、確認すべき範囲が変わります。次の表は感染を判定するものではなく、相談先へ経緯を伝えるための整理です。
| 自分が行ったこと | 次にすること |
|---|---|
| 画面を見ただけで、指示には従っていない | 不審なページから離れ、追加操作をしない |
| ボタンを押した、または何かをコピーした | 実行画面などへ貼り付けない。どの操作まで行ったか残す |
| 指示を貼り付けて実行した | 会社・学校なら管理担当へすぐ連絡する。個人端末でも公式窓口へ相談する |
| パスワードなども入力した | 端末への対処に加え、対象アカウントの公式の保護手順を確認する |
実行した場合や感染が疑われる場合は、組織の手順に従って通信を切り離し、その端末へ大切な情報を入力し続けないでください。自分だけで初期化や削除を繰り返すと、調査に必要な情報を失うおそれがあります。
相談するときは、時刻、開いたサイト、表示された説明、押したボタン、貼り付けや実行をしたかを、覚えている範囲で伝えます。実行した指示が分からなくても、原因を特定してから相談する必要はありません。危険な指示を確かめるために、もう一度実行することは避けます。
アカウントの保護を行う場合は、感染の疑いがない別の端末などから、普段利用する公式アプリや公式窓口へ進みます。二要素認証などの設定も役立ちますが、端末に残る不正な処理を取り除く対応の代わりにはなりません。
ClickFixを見抜くために、攻撃の文字列を読めるようになる必要はありません。認証や修復の案内が、端末での不明な実行へ変わったら止まる。 まずはこの目印を覚えておくと、見慣れた画面に急がされても、一度確認する余地を残せます。




