非接触ICカードの仕組み|Suicaが電池なしで動く理由

ラボの読み取り機の上に、アンテナとICチップを透かして描いたカードを置いた説明用模型

30秒でわかる答え

Suicaなどのカード型の非接触ICカードは、読み取り機が作る磁界の変化から電力を受け取り、その電力でICチップを動かして近い距離でデータをやり取りします。カードの残高を増やすチャージは、電池への充電とは別です。

Suicaなどのカード型の非接触ICカードは、読み取り機が作る磁界の変化から電力を受け取り、その電力でICチップを動かして近い距離でデータをやり取りします。カードの残高を増やすチャージは、電池への充電とは別です。

改札でカードをタッチすると、すぐに反応する。でも、カードには電池を交換するふたも、充電ケーブルを挿す場所もありません。どこから動く力を得ているのでしょうか。

この記事では、Suicaのような物理的なカードを例に考えます。スマホで使うサービスの電池切れ時の動作は、端末や設定によって条件が異なるため、同じ説明をそのまま当てはめません。

電池なしで動く仕組み|電力は読み取り機から

カードの中には、細い導線をループ状にしたアンテナと、情報を処理するICチップが入っています。ICチップは、小さな電子回路をまとめた部品です。

ラボで中身を図にするときは、輪になったアンテナと小さなチップを描き分けます。カードの外側にある名前や絵柄ではなく、その内側の部品が働くためです。実物を切り開かなくても、図のどの部分が電力を受け取るかをたどれます。

読み取り機は、その周囲に変化する磁界を作ります。カードを近づけると、カード内のアンテナに電圧が生じ、回路を動かす電力を取り出せます。このように磁界の変化から電圧が生じる働きが、電磁誘導です。

「電池がない」は「電気を使わない」という意味ではありません。カードが自前の電池を持つ代わりに、利用するときに読み取り機からエネルギーを受け取っているのです。読み取り機側には電源が必要です。

また、カードを勢いよく振ることで発電する仕組みでもありません。読み取り機が磁界を変化させるため、案内された位置にカードを落ち着いて近づければやり取りできます。

カードのアンテナとICチップは、何をしている?

外からは一枚の薄いカードに見えても、中では部品が役割を分けています。改札の読み取り部も、カードの絵柄をカメラで読んでいるわけではありません。

部分主な役割
読み取り機カードへ電力を供給し、データを読み書きする
カード内のアンテナ読み取り機との電力・信号のやり取りに使う
カード内のICチップ受け取った電力で動き、記録した情報を処理する

一般に「読み取り機」と呼ばれますが、情報を読むだけでなく書き込む装置は「リーダー/ライター」とも呼びます。読むことがリード、書くことがライトです。

Suicaなどで使われるFeliCaは、こうした非接触ICカードの技術方式の一つです。「非接触」は、金属の端子を直接つながずに通信できることを表します。駅で「タッチ」と案内されていても、指で画面を押す操作や、表面の印刷を読む仕組みとは異なります。

印刷された模様をカメラで読み取る仕組みは、QRコードの記事で扱っています。同じ「かざす」でも、読み取る対象が違います。

電力を渡すことと、情報を読み書きすることは別の役割

左の読み取り機から右のカードへ向かう青い給電の矢印と、両方向を向く金色のデータの矢印
青はカードを動かす電力、金色はデータのやり取りを表します。役割を分けた模式図で、二本の独立した電波経路や実際の回路・通信距離を示すものではありません。

カードに近づけた読み取り機は、動作に必要な電力を供給するとともに、カードとデータをやり取りします。たとえば交通系ICカードでは、利用に必要な情報を読み、入場などの情報を記録します。

ここで、電子マネーの「チャージ」と混同しやすくなります。残高のチャージは、利用できる金額に関する情報を更新すること。スマホの充電のように、カードの中へ電気をためる操作ではありません。

イト

Suicaにチャージしたお金が、カードを動かす電気になるの?

マコト

金額は記録する情報だよ。チップを動かす電力は、読み取り機から受け取るんだ

混同しやすい言葉このカードでの意味
電力を受け取るICチップが動くためのエネルギーを得る
残高をチャージする利用できる金額の情報を増やす
データを書き込む利用に必要な情報を記録・更新する

カードが読み取り機から離れて動作を終えても、それまでの記録を毎回失うわけではありません。情報を残せるメモリーを備え、次の利用時には再び電力を受け取って、記録した情報を扱います。動かすための電力と、残しておく情報を分けると、電池がないのに繰り返し使える理由が見えてきます。

タッチしたら、処理が終わった表示を確認する

カードは、離れたところからずっと電力を受け取れるわけではありません。読み取り機とアンテナが近い距離にあり、電力と信号をやり取りできる必要があります。使える距離や向きは、カードや装置の作りによって変わります。

そのため、読み取り部を通り過ぎるように速く振るより、装置の案内に従って所定の位置へタッチし、完了した表示や音を確かめることが大切です。通信の途中で電力を受け取れない位置へ離れると、処理が終わらないこともあります。

また、「近くにある」「音がした」だけで、支払いなどの目的が必ず完了したとは限りません。装置の表示も合わせて見ます。反応が違うときは、その場の案内に従いましょう。仕組みを知るために、何度も試しの決済をする必要はありません。

次の利用で確認してみる|カードを置く場所と終わりの表示

普段の用事でカードを使う際に、次の三点を確かめてみましょう。カードを分解したり、改札の流れを止めたりする観察ではありません。

  1. カードを置く場所:どこにアンテナを近づけるよう案内されているか。
  2. 処理の終わり:どの表示や音で完了を確かめるか。
  3. 扱っている情報:残高や利用記録など、何の情報を読み書きした場面か。

小さなクイズです。「カードの残高が多いほど、読み取り機から遠くても動く?」。答えは「いいえ」です。残高は利用できる金額の情報であり、通信のための電力ではありません。

カードの表面は静かなままでも、近づけた瞬間には電力を受け取り、情報をやり取りしています。無線で情報を運ぶ別の例を知りたいときは、Bluetoothの仕組みへ進めます。

非接触ICカードのよくある質問

Q1. Suicaのカードには電池が入っているのですか?

A. ここで扱うカード型のSuicaは、読み取り機から電力を受け取って動くため、内蔵電池は必要ありません。スマホの電池切れ時に使えるかどうかは、別の条件で決まります。

Q2. 残高のチャージは、カードの充電ですか?

A. いいえ。利用できる金額の情報を増やす操作です。カード内のICチップが動くための電力は、読み取り機から受け取ります。

Q3. カードの表面の文字や絵を読み取っているのですか?

A. 非接触ICカードでは、内蔵されたアンテナとICチップを使って読み取り機と通信します。表面の模様をカメラで読むQRコードとは異なります。

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非接触ICカードを一文で説明してみよう

「カードを動かす電力と、カードに記録する情報を分けて説明できる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。